感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
98
クッツェー、アディーチェの翻訳で知られる著者のエッセイ。著者の出身地が北海道新十津川で、その原風景は自分が過ごしたことのある同じ空知地方という点で重なる部分がある。〈記憶のなかのピンネシリ〉の山は、郷里の里山から遠くに目を凝らせば見ることができる。江部乙の〈あさひ、という名の林檎〉の木箱は家で買っていたし、〈井戸とか猫とか長屋とか〉の炭鉱町の十軒長屋に住んでいたこともある。北海道へ帰省したときに感じる空間をめぐる身体レベルの〈つんのめるようなエンプティネス〉感覚に、〈こくわの実〉も北海道のあるあるである。2022/02/07
fwhd8325
64
素晴らしいエッセイでした。くぼたのぞみさんという作家は初めて知りましたが、このエッセイを読んだだけで、この方が歩まれてきた時間を垣間見ることができたように感じました。子どもの頃のこと、学生時代、ジャズに夢中になったこと。初めて読んだ作家さんなのに、とても距離が近いように感じました。2022/04/19
hiroizm
30
翻訳家である著者の自伝的エッセイ集。クッツェーやアディーチェなど文学に関連したエピソードも面白かったが、幼少期過ごした北海道の家や町の様子、大学生の時の60年代東京様相も面白かった。また自分の好きな音楽ジャンルなので、著者が通ったジャズ喫茶やライブの様子は興味津々で読んだ。著者が学生のころ夢中になったニーナ・シモンなどジャズのアルバムもできればじっくり聴いてみたい。2022/05/07
かもめ通信
26
翻訳家であり、詩人であるくぼたのぞみさんのエッセイ集なのだが、読み心地はまるで一篇の長編小説のよう。母から娘へ、著者から読者へ、確実に引き継がれていくもの、引き継がれる度に補強され補完されていくものが確かにある。そのことを思うと、郷愁とともに、安心にも似たあたたかな気持ちが心に広がっていく。2022/04/21
アヴォカド
19
この方の翻訳はいくつか読んでいるけれど、ご自身の文章であるエッセイを読むのは初めてだ。文章上手いなあと思いながら読んだ。幼い頃の北海道の話、ジャズの話、ニーナ・シモンの話も面白かったし、藤本和子の本も読みたくなった。2022/02/13