目次
ピース降る
可愛くて申し訳ない
ロッキンホースバレリーナ
ひとの眠りにつばさを重ね
詩は祈り、祈りのように
眠りの森に
あすを生きるための歌
空がほつれる
この部屋で死のう
かなしみは咀嚼できるのとか、知らない
夜空の死角
Godzilla
いろづかい
わたしの果てにわたしはいない
ぼろぼろになればよかった
目覚めたらそこにいてほしかった
きみの花冷え
たぶんこれも薄らいでいくひかり
grief work
著者等紹介
田丸まひる[タマルマヒル]
1983年徳島県生まれ。精神科医。2011年「未来短歌会」入会、翌年に未来賞受賞。2014年より「七曜」同人。しんくわとの短歌ユニット「ぺんぎんぱんつ」としても活動中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
28
#短歌 p6 笑ってほしいだけだったんだ冬の雨スープはるさめ食べ比べして p7 胸骨にくちをつければ笑い出すきみが片手で飲むVolvic p10 海の映画の名前を思い出せなくて舌に翡翠を転がすように p14 こころには水際があり言葉にも踵があって、手紙は届く p17 聴覚が滅びるような気だるさを沈めて遠い夏の浴槽 p20 檸檬水きみは言葉のすみずみに裏地をつけてつつんでくれる 2017/11/08
あや
25
再読。著者は83年生まれ。物心ついた時は平成だった昭和生まれ世代。ピースフルとかけたタイトル、コンセプトに共感して再度手に取り、突如「自撮りブス」という語彙が目に留まり十代のコンプレックスの多い多感な少女のようだと思った。少なくとも私は一生自分の歌の中に「自撮りブス」と言う語は使わないからびっくりした。嫌な言葉だと思った。誰に対して使うにしても。ジェネレーションギャップというやつか。80年代が青春だった私からするとメイク観もこの世代ならではだなあと感じる。2023/11/05
あや
10
Kindleで繰り返して読んだ本を紙の本で読みたくなって紙の本で買い直して読む。結婚という新しい生活。手術。まず「ピース降る」というタイトルがとても好き。2021/07/23
かみしの
8
ピース降る、さいわいの破片が降る。しあわせは痛みでもある。〈雨は檻、雨はゆりかご寒がりのきみをこの世にとどめるための〉〈雪のような夜の春だねいつまでもきみは無料の音楽を聴く〉降るものは、桎梏であり安定だ。それはしあわせという言葉の二面性そのものだ。春夏秋冬(特に冬)という言葉や、傘という言葉が多いように思った。小さい秋見つけた、ではなく、小さい秋に見つけられる。だから、傘で防ぐ。〈ほろほろと生き延びてきて風を抱くきみの感情のすべてが好きだ〉〈術前のライブチケットひそませた財布を薄い金庫にしまう〉2017/11/10
桜井夕也
5
笑ってほしいだけだったんだ冬の雨スープはるさめ食べ比べして/感情を言い表せる言葉より花の名前の方が多いね/しらしらと揺れる言葉にみずいろの付箋を溶けてゆくように貼る/だってまたおいで待ってるからねって言ったよね言ったよね言ったじゃないか/やわらかく耳ふさがれる夕方の潮騒だれかの声、だれかの声、だれかの/ざらりおん金平糖を踏むような会話のざらりおん、ざらり、おん/透きとおる傘をわずかに傾けてわたしは色をこらえきれない/心音を重ね合わせて心音をからだのなかに泡立たせたい2017/06/25