内容説明
ハンセン病問題は1996年の「らい予防法」廃止以後のいまもなお、日本社会における重大な人権侵害の事例として注目を集めている。そうした社会の関心と相まって、教育現場ではビジュアルでハンセン病問題を学べる教材が要望されている。本書はプロの漫画家によるハンセン病問題を主題とした書き下ろし一大長編コミックである。小学生から手に取ることができ、大人にも読みごたえのある作品となっている。主人公の置かれた境遇に感情移入して読み進めるうちに、ハンセン病をとりまく様々な事象を学べる構成になっている。多くの読者の手に渡ることを願って、本書を刊行する。
著者等紹介
古林海月[フルバヤシカイゲツ]
鹿児島県生まれ。2003年「夏に降る雪」で『イブニング』からデビュー。公務員時代に仕事でハンセン病療養所・邑久光明園を訪問。その後も入所者・退所者らと交流を重ねながら『麦ばあの島』の執筆をつづけてきた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
厩戸皇子そっくりおじさん・寺
67
ハンセン氏病漫画最終巻。過去が重たい主人公・麦ばあと対比する形で登場するもう一人の主人公・女子大生聡子(とその姉)。中絶や不妊治療等の問題にも触れている。作者は昔、兵庫県の公務員だったそうだ。安泰を捨ててこういう漫画を描いている事に頭が下がる。男の存在がいささか薄いこの漫画だが、麦ばあが絶縁状態だった弟と再会する。肉親だからこそ素直になれない。肉親だから愛憎半ばする。家族は愛すべきものでもあるが、憎んでいる人もこの世にごまんといる。聡子は流した水子と折り合いをつけ、新しく社会に出てゆく。1度は読むべし。2018/09/20
ベーグルグル (感想、本登録のみ)
49
4巻読了。知らなかったハンセン病の療養所での生活について知ることが出来た。ただそこは病気を治すところではなく姥捨て山のような印象であった。今現在でもハンセン病に対する偏見や差別がある。そしてハンセン病そのものを知らない人も多い。まず事実を知ること。作者は昔、兵庫県で公務員をしていた時に、ハンセン病の療養所を訪れたことで興味を持ち、あるハンセン病の本作者と交流を持ったことでこの物語が出来たそう。この本は鹿児島の高校生が勧める本の1冊として出会った。高校生が勧めるって事実が嬉しかった。2019/05/25
★YUKA★
37
ハンセン病のこと、漠然としか知りませんでした。差別も隔離も。この本も読友さんのレビューから知りました。 もっと沢山の人に読んで欲しいです。2018/11/02
たまきら
35
不妊。強制堕胎。中絶。女の苦しみが登場人物とともに綴られたこの本は、ハンセン病という疾病に対する政策が産んだ悲劇だけでなく、現代女性の生きにくさも織り込まれていて、読みごたえがあった。あとがきで作者が入所をすすめる役人は自分がモデルだということ、法律で決まっているからと悪気なく自分もすすめていただろう、という言葉が胸を打ちました。私たち人間は法律に則りたい、みんなと同じでありたいと願う社会動物です。でも、その法律に科学的根拠が無かったら?自分自身がその対象になったら?ハンセン病資料館に行きたいと思います。2019/11/11
さよちゃん
32
「ハンセン病」漠然とは知ったようでいたけれど、読み終えて実は知ろうとしなかった…が正直なところかも知れない。治療に行く病院は治すのが目的でなく隔離することが目的で どんな思いで患者は家族から引き離され残された家族は病気を出した家の者!と世間から差別を受け患者の事は「死んだ者」として扱い…正確な情報(医学的な情報)を知らなかっただけにどれだけの人達が長年にわたり悲しみ苦しんできたのかがこの作品を読んで少しは知ることが出来た。とても重いテーマだけどコミックなので読み易くかつリアル。出会えて良かった。2019/09/19