内容説明
大島浩といえば、「ヒトラーナチスの追従者」「暗号を解読され、連合軍に有利な情報を流し続けた人物」で片づけられがちなのは否定できない。ではなぜ、最後まで、特命全権として、日独政府の信任を得られたのか、なぜ、情報外交戦に通じた人物が、ドイツ軍有利の電報を送り続けたのか、疑問が尽きない。本書では、「敗者は歪曲される」を立証すべく、その典型例として、定説化された大島浩を取り上げ、外交・情報資料を再検証し、多角的視点でその実像を明らかにする。
目次
駐独武官への道
外交戦
第二次世界大戦
独ソ戦と太平洋戦争
戦局の転換
最後の攻防
東條との別れ
著者等紹介
中川雅普[ナカガワマサヒロ]
1959年(昭和34年)熊本県八代市生まれ。大阪大学大学院文学研究科前期博士課程修了。専門は、ドイツ現代史・労働政策。平成14年から神戸女子短期大学非常勤講師「国際関係論」。現在、地元で、熊本学園大学「公務員講座」、ひとり親学習支援事業に携わりながら、念願の執筆活動に従事。大阪大学西洋史学会所属(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Yasuhisa Ogura
2
日独伊三国同盟の推進役とされる大島浩駐独大使の再評価を試みたもの。かなりユニークな説が展開されている。例えば、1939年4月に大島大使はリッペントロップ外相から三国同盟を締結しないかぎり、独ソ不可侵条約を締結するという「最後通牒」を受けたという。その他、ダンケルクの奇跡はソ連が期待する英独の共倒れを防ぐため、大戦末期の独軍の健在ぶりを伝える(偽の)公電により、ソ連は軍を東に移動できず日本分割が回避できたなどである。立場によって、ここまで見え方が異なってくるのか・・・2021/09/29
コラッジョ
1
日本では誤解されがちな大島浩の評伝。 大島には大島なりの地球儀外交が存在しており、それはソ連のスターリンを日独で挟んで一気に叩き潰すという物であった。 それがもし出来ていたら、ドイツは東部を気にせず戦えたし、イタリアも北アフリカ戦線で盛り返しただろうし、日本も北方の脅威を除去してシナ事変に傾注出来ていただろう。 中国共産党の勢力も大きく減退し、蒋介石に和平を強いる事も夢ではなくなったかも知れない。 非常に残念な事である。2016/04/28