内容説明
1949年以降、台湾の現代作家たちは国民党政府との緊張関係の中でどのような活動をしたのか。共産党政権と国民党政府とのダイナミックな関係を通して、その実相にはじめて総合的に迫った画期的業績である。著者は国民党政府と作家との関係の源を30年の魯迅と梁実秋とのプロレタリア文学論争に見出す。彼らは文学における階級観は対立するが、固有な文学精神であるリアリズム精神については共通理解をもっていた。毛沢東の『文芸講話』に象徴される、文学は救国と政治に奉仕すべきものとの一貫した文芸政策の中で生じた粛正と弾圧、台湾政府への影響と蒋介石政権の独裁化に伴う作家への弾圧。それら一連の動きを柏楊投獄事件や白樺制作の映画『苦恋』の大陸での批判と上映禁止、その台湾版制作の経緯を通して解明する。政治と文学の間に生起する複雑な構造的関係を分析する視点は、中国近代文学史研究へ一石を投ずるだろう。
目次
第1章 問題の所在―作家と政治の関係から見る台湾現代文学
第2章 魯迅と梁実秋―かれらの論争に表れた作家と政治の関係
第3章 国共関係のなかの政治と文学―梁実秋批判について
第4章 『自由中国』知識人の政治と文学
第5章 柏楊投獄事件に関する考察
第6章 統戦工作のなかの台湾映画『苦恋』について
第7章 政治と台湾現代映画―甦る「三十年代文学」
著者等紹介
小山三郎[コヤマサブロウ]
1952年埼玉県生まれ。慶應義塾大学法学研究科(政治学専攻)博士課程修了。現在、杏林大学国際協力研究科・外国語学部教授。法学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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