出版社内容情報
他者の道を歩くことはできず、自らの道を歩むよりほかにない現実を
投影してしまう詩形としての短歌、そのような短歌への親しみと畏れを、
本歌集を編むことによって改めて抱くことになった。
(あとがきより)
現代短歌新人賞受賞の『アシンメトリー』から七年となる待望の第二歌集。
月光はスライスアーモンドより脆く身じろぐたびに割れてしまった
冬がいい桜並木の静けさを独り占めして歩くのならば
ガラス戸に翳り映れるわが顔もわが顔 鳩が白く過ぎりぬ
フード付きパーカーはおる季となり知らずに積もる後ろの時間
遊歩道ぐるりと廻らせ手賀沼は確かめておりおのれの広さを
じわじわと四十代にも馴染みおり器に牡蠣の殻積み上げる
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
24
#遠藤由季 #短歌 「太き龍神」 p.14 骨のまま建つ八ツ場ダム見上げおり骨となる愛だれにでもある 洞となる窓ばかりある吾妻に日照雨(そばえ)は降りぬほそき息として p15 ダムの上に立てば王者の心地せむ太き龍神追い払いたる 放流がすなわち産声まぼろしのダムの産声日照雨に紛る p17 秋映という名の林檎購えり雨に濡れたる落ち葉色なる p20 入り組んで降る雨のなかひとすじのさみしさは貫けり怒りを #返歌 水に流すことを止めようダムを見る自然と人間ちから比べは 2018/06/26
双海(ふたみ)
8
「秋映といふ名の林檎購えり雨に濡れたる落ち葉色なる」「空の壜捨てるこころは痛みおり婚解きにゆく霜月の朝」「誰の本読んでいるかと訊かれたることなし歌集を読む昼休み」2023/10/05
浦和みかん
1
再読。着眼点が面白い歌でも、描写の仕方で"わかりすぎてしまう"ところがある。連作の組み方は、物語の線というよりも、一つの単語や事象から波及してゆく感じに(勝手なイメージだが)かりんのカラーを思う。2018/08/23
浦和みかん
1
独身として30代から40代へ年齢を重ねてゆくことの若くはないが年老いているわけではないこと、残業などしつつ裕福ではないが貧困でもないこと、震災などに悲しみつつも当事者ではないこと、そういったあわいに立っていることの主体の遣る瀬無さのようなものを多く感じた。歌については、いささか対象にピントが合いすぎている気もするが、これも作風か。<湖であれば恋などひとつくらい語りしものを手賀沼は沼><キク科なるガーベラと菊そのような従姉妹と十年ぶりに会いたり><ぼた餅二個うどん一玉平らげて耳遠き祖父こたつに眠る>2018/02/22
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