著者等紹介
ヴァルザー,ローベルト[ヴァルザー,ローベルト][Walser,Robert]
1878‐1956年。ドイツ語圏スイスの散文作家。長編小説の他、多数の散文小品・詩・戯曲を発表。1933年にヘリザウの精神療養施設に入所して以降は筆を断ち、1956年のクリスマスの朝、散歩中に心臓発作で死亡
若林恵[ワカバヤシメグミ]
東京生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程中退。現在、東京学芸大学教育学部准教授。専門はドイツ語圏文学・文化(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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rinakko
13
偶々この巻を5冊目に手に取り、他の長篇との違いを少しく意外に思いつつ読んだ。訳者後書きで、ヴァルザー自身が発明家に雇われていた時期の事実に基づいて描かれた小説と知り、なるほど…と。雇い主トープラー氏をはじめ、トープラー夫人やその子供たち、前任者のヴィアジヒ…、それなりに善良ではあるが愚かでもあり成功には縁のない人たちを、主人公ヨーゼフは愛情を抱きながらも冷静な目で見ている。美しい自然に囲まれている彼の陶酔と、現実の醜悪さを受け入れていく過程の静かな幻滅の比に容赦はないけれど、ラストには不思議な解放感がある2017/02/24
内島菫
4
作品中最大の出来事であるトープラー家の経済的・社会的破滅が起きつつも、その事自体は重要視されることもなく、繊細で荒っぽい登場人物たちの反応や態度が心理劇に堕することなく描写され、トープラー夫人への助手の感情は恋愛に発展することもなく、母親にも愛されない悲惨なジルヴィは救われることもなく、作者の実体験を書いたとされつつも主要人物たちは冗長にしゃべり、場面は突然途切れ、始まる。止まっているような流れているような掴みどころの無さは本作の傑出した点であり、作者自身が感じていた現実の肌触りだったのかもしれない。2013/10/25
h
4
ヴァルザーは日曜日と結婚している。2011/07/30
ルーシー
2
劇的な展開も無く、ハッピーエンドでも無い。解説にもあったが、ヴァルザーの日常を決して美化せず淡々と綴られる文章は何故か癖になる。主人公が妙に冷静・冷淡な分、周囲のキャラが魅力的に見える。2020/10/21