著者等紹介
ヴァルザー,ローベルト[ヴァルザー,ローベルト][Walser,Robert]
1878‐1956年。ドイツ語圏スイスの散文作家。長編小説の他、多数の散文小品・詩・戯曲を発表。1933年以降は精神療養施設で過ごし、1956年のクリスマスの朝、散歩中に心臓発作で死亡
新本史斉[ニイモトフミナリ]
1964年広島生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。現在、津田塾大学国際関係学科准教授。専門はドイツ語文学、翻訳論
ヒンターエーダー=エムデ,フランツ[ヒンターエーダーエムデ,フランツ]
1958年ドイツ、バイエルン州生まれ。文学博士。現在、山口大学人文学部教授。専門は比較文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
pyoko45
10
なににつけても長続きしないけれど、周りのみんなから気に掛けられる愛されキャラのジーモンくんが、職や住むところを転々としながら、時に意外な事実が明るみになり、ちょっとした運命の再会を果たしながら、出会った人たちに尺を気にせず憑かれたようにことばを浪費してひたすらしゃべりまくるというツッコミどころ満載のお話で、始めのうちは生意気へらず口にカチンとくるものの、一面真実を突いていて、これもありかなと妙に共感を覚えるところもあり、読後のえもいえぬ幸福感はまさに唯一無二の読み心地。まったく素晴らしいよ、ジーモンくん。2015/05/28
gu
7
成程これが「バートルビーと仲間たち」か、という感じ。変なところで古臭くて変なところで現代的で面白い。語りの極端な歪さも。ただ語ること、ただ生きること、ただ動作を行うこと(或はそれらの反対)を感動的だったり即物的に描く作品達があると思うのだが(個人的にはベケットや吉田健一や福本伸行)、ヴァルザーのこの作品はそれらを兼ね備えながらさらに異彩を放っている。高橋源一郎が書評で(金井美恵子の『恋愛太平記』?)で「生きることは絶望しかなく生き直すことにのみ希望がある」的な事を書いていたのを思い出した。2015/02/20
pynchon
6
今年初の完読本。 筋が無く読書は難航したが人生で5本の指に入るくらい面白かった。デーブリーンといいベルンハルトといいゼーバルトとドイツ圏の作家が最近お気に入りである。 未だにカフカが読めない。2017/03/19
ルーシー
4
小説を読んでいる、というよりは自分が散歩しているような、途中で出会った人とお喋りをして、別れて、また違う人と出会ってお喋りして…を繰り返しているような感じだった。明るい将来は要らない、出世欲も無い、ただ今を生きていたいジーモンに共感を覚えた。一番好きな文章は「努力した結果、何も得られはしなかったけれども、少なくとも美しい季節だった。」2020/06/11
猫のゆり
4
一つの職が長続きしたことがなく、住む所も偶然出会った親切な人の好意に甘えたり、姉を頼って田舎町に暮らしたり・・という、どうしようもないダメ人間に見える主人公。が、彼の饒舌すぎる独白をずっと聞いていると次第に、あ、これも一理あるのかな、とか、ただ社会の歯車のひとつになってがむしゃらに働くだけが果たして人の正しい道なのかと疑問に思えたりしてしまう。周囲の人たちもなぜか彼に魅了され、あれこれと親切にしてくれるのだが、それもむちゃな話だと思うんだけど、どこかで納得してしまったり。変な小説・・なんだけど面白かった。2011/08/09