内容説明
ロートの魅力を深く知るための三篇、「放浪のユダヤ人」「ホテルの世界」「精神の火刑」を収録。それぞれロートの三つの時代を表現する好エッセイ。
目次
放浪のユダヤ人(西における東方ユダヤ人;ユダヤ人の小さな町;西のゲットー;ユダヤ人がアメリカへ行く ほか)
ホテルの世界(ホテルに到着;ドアマン;老給仕;調理場の料理人 ほか)
精神の火刑
著者等紹介
平田達治[ヒラタタツジ]
1934年生まれ。大阪大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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em
14
「放浪のユダヤ人」戦間期のヨーロッパ諸国・都市において(東方)ユダヤ人の置かれていた状況。それぞれ微妙に空気が違っていたことがよくわかる、貴重な証言。東方と西方についての弁、西との同化を誇る人々に対する苛立ちは、現代トルコのパムクに重なるところも。「ホテルの世界」各地でホテル住まいをしていたロートの述懐はノスタルジーと情愛に満ちて、長く心に残る短篇のようなエッセイ。映画『グランド・ブダペスト・ホテル』(ツヴァイクの自伝がインスピレーション源らしい)を思い起こさせます。2017/06/10
Toska
6
ガリツィア出身のユダヤ人作家ヨーゼフ・ロートによるエッセイ集。気ままな旅暮らしの描写の中に根無し草的なユダヤ人の生き様が浮かび上がる「ホテルにて」も味わい深いが、やはり圧巻は「放浪のユダヤ人」。ここでロートは自らがその一員たる東方ユダヤ人としての視点にこだわり、西側の人々(その中には西方ユダヤ人も含まれる)への違和感を表明している。なるほど西方世界は豊かで清潔で、東方への同情心にも事欠かない。だがその陰にあるどうしようもない冷たさは隠し切れなかった。2024/01/29
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