内容説明
「軍神神話」の陰に隠された天下平定のシナリオとは?二度の上洛、関東管領職、川中島合戦―そこには何の意味があったのか。
目次
序章 長尾為景の魔法と上杉謙信
第1章 要請された守護代継承―長尾景虎の登場
第2章 大名権力と公儀精神の矛盾―長尾宗心の苦悩
第3章 前嗣・義輝・景虎の密約―戦国終焉のシナリオ
第4章 関東管領名代職に就任する上杉政虎
第5章 中央情勢と連動する川中島合戦―四五〇年目の真相
第6章 永禄の変と関東三国志―上杉輝虎の関東離れ
終章 不識庵謙信と天下の儀
著者等紹介
乃至政彦[ナイシマサヒコ]
1974年香川県高松市生まれ。戦国史研究家。主に戦国期の越後上杉氏に対し、政治史的解釈を基点に置くことで通説の見直しを試みている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鐵太郎
15
上杉謙信とは義の武将といわれます。聖将とあがめる人もおり、逆にこき下ろす人もおり。この本は、それらを引き継いだかたちで、どちらにも属さない謙信像を描くと同時に、戦国時代と言われた室町末期から織豊時代に至る期間に、各領主たち、大名たちをどのように解釈すべきなのか、彼らは何を目的に生きたのかを独自の考え方で描こうとしています。総じて「義の人」という美辞麗句についてはハテナとしますが、その生き方についてはあり得たであろうことを好意的に描いています。読んでみてわりと心地よい読後感のする上杉謙信の伝記でした。2012/02/15
ワッツ
6
謙信の実像が浮き彫りになってきた。近世における「戦争芸術家」のイメージから、近年疑われだした人身売買等の悪評に対する見解や、関東管領に関する密事の詳細、その他の謎も随分と明らかにされた。謙信にはやはり大望があったのだ。そこには何百年かけて培われてきた謙信のイメージを覆す現実が多々散見される。しかし事実が明らかになる度、謙信という人物が益々魅力的に見えてくるのはなぜだろう。謙信の実像について書かれた本では、今迄で一番納得がいき楽しかった。後半生の記述が少ないので、そこは次回作に期待したい。2015/01/19
ホッタタカシ
4
『関東戦国史と御館の乱』の共著者の一人で、まだ30代の上杉家ファンによる謙信解説本。丁寧に史料を解読しながら、“イッちゃったカリスマ”として語られがちな謙信像を見直し、さらに最近話題の「関東出兵略奪目的」説、「川中島の戦いの真実」説への批判も加え、読み応えある。「戦国大名」の認識を巡っても教えられること多し。室町幕府再興を志向した謙信の“律儀さ”は後継者の景勝に引き継がれたのか、とも思わせる。2013/12/03
BIN
4
今までの上杉謙信像から少し違い近年の研究成果も取り入れており、非常に興味深かった。兄晴景との争いや長尾政景の突然死や飢饉対策の戦争についてなどなどがなかなかなるほどと思わせる内容だった。2013/09/27
Kiyoshi Utsugi
3
乃至政彦の「上杉謙信の夢と野望」を読了しました。 軍神というイメージの強い上杉謙信ですが、実際のところはどうなのか、何を目的として関東管領職につき、なんのために幾度となく武田信玄と川中島の戦いを繰り広げたのかを知りたくて読んでみました。 これまで知らなかった謙信像も垣間見ることが出来ました。2019/02/02
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- 和書
- 月島慕情 文春文庫