出版社内容情報
あの橋を渡れば幸せになれる…過去を抱えた女の哀切あふれる恋を描いた表題作、TVドラマ「シューシャインボーイ」他、珠玉の全7篇。
内容説明
恋する男に身請けされることが決まった吉原の女が、真実を知って選んだ道とは…。表題作ほか、ワンマン社長とガード下の靴磨きの老人の生き様を描いた傑作「シューシャインボーイ」など、市井に生きる人々の優しさ、矜持を描いた珠玉の短篇集。著者自身が創作秘話を語った貴重な「自作解説」も収録。
著者等紹介
浅田次郎[アサダジロウ]
1951(昭和26)年、東京生まれ。著書に「地下鉄(メトロ)に乗って」(第16回吉川英治文学新人賞)「鉄道員(ぽっぽや)」(第117回直木賞)「壬生義士伝」(第13回紫田錬三郎賞)「お腹召しませ」(第1回中央公論文芸賞、第10回司馬遼太郎賞)「中原の虹」(第42回吉川英治文学賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
148
表題の『月島慕情』を含む七つの短編集。慕情という字を表題に持ってきたからか、どの作品もしんみりとさせ、思わず涙がこぼれる。でも、読者を泣かせようとするあざとさを感じさせないのは、浅田さんがどの短編でも名言と思われるような一行、または数行を書かれているからだろう。寒い北海道が舞台の話もあるのに、8月の最後に読むのがぴったりな夏の終わりを感じる話。作品自体もすごくいいものだが、そこに作者自身の解説、さらに桜庭一樹さんの解説があるのが、この短編集を読んだ余韻を一層に高めてくれる。2014/08/31
HIRO1970
139
⭐️⭐️⭐️⭐️リハビリ37冊目。浅田さんは41冊目。短編が7つも入っているかなりお得な一冊です。41冊目ですからそれなりなりに浅田さん慣れしても良い頃だと思いますが、浅田さんのあざとさにやられないように毎回気を張ってはいるのですが、強弱硬軟自在な語り口に毎回唸らされてつつ、かれの術中にハマってしまうのはどうやら避けられない事のようにも思えてきました。う〜んこれが浅田さんの楽しみ方なのかも知れません。個人的には表題作と冬の星座、と最後のシューシャインボーイが良いかなと思えました。2019/12/02
じいじ
134
「夢は惚れた男に添うことでなく、苦界から這い出ることだった」―吉原に生きる女の強かな本音だろう。花魁から身請けされて、下町月島の女将さんになる女心の変化の愛おしさが見事に描かれた表題作。巷の人々を描いた七編、バラエティーに富んでどれも暖かさのある心を打つ作品だ。私の印象作は、盲目の女が実らぬ恋を胸に秘めて力強く生きる話【めぐりあい】。この作品は、著者がマッサージをされながら思いついた小説とのこと。昭和への郷愁を抱かせる【シューシャインボーイ】も好かった。哀歓こもごもの感動作だ。面白い短篇集でお薦めです。2018/04/09
Take@磨穿鉄靴
105
浅田次郎氏の短編集。個人的に浅田氏は短編の方が贅沢に輝く印象。こちらも良作。個人的には冬の星座が良かった。矜持を失い尊大な態度で晩節を汚しまくっている父に読ませたい。大声を出したり物を叩いたり急にいじけたり…。もう少し社会と繋がって欲しい。このおばあちゃんまでいかなくてもさ。★★★☆☆2019/03/12
やいっち
95
読書メーターで敬愛する方の感想を目にし、入手した本。浅田氏にはかねがね関心を抱いてきたが、これが契機と。読み出してもっと早く手にすべきと感じた。どの作も、「市井に生きる人々の優しさ、矜持を描いた珠玉の短篇」というのがしみじみ実感させてくれる。吾輩ごときが感想を書く必要もないだろう。2022/08/05