内容説明
草創期の新聞は御用新聞と民権派新聞に分かれ、激烈な言論戦を戦わせていた。そのさなかに西南戦争が勃発した。新聞はうろたえた。戦争を報道するという意味と方法がつかめなかったからである。読者の声に突き動かされるままに新聞は戦争の波にのみこまれていく。この報道合戦のなかで二人のヒーロー―ひとりは『東京日々』の福地櫻痴、もうひとりは『郵便報知』の犬養毅―を生んだ。二人の抜きつ抜かれつの取材合戦を縦軸に、明治新聞人のもう一方の雄・『朝野新聞』の成島柳北の沈潜ぶりを横軸に三つ巴の新聞人の格闘ぶりを描き出す。戦争報道はどうあるべきか?客観報道とは何か?権力との緊張関係はどうあるべきか?そのとき日本の新聞はジャーナリズムに生まれ変わった。
目次
第1章 唯今戦争始め候(鹿児島に起こる衝撃;動き出した『東京日々』 ほか)
第2章 鉄石心腸を有す(弾圧法で検挙された最初の新聞人;「新聞界に末広鉄腸あり」 ほか)
第3章 田原坂の戦、烈々たり(焦る末広鉄腸;『朝野』の両輪・鉄腸と柳北の呼吸の乱れ ほか)
第4章 砲煙弾雨を縦横にくぐりたり(『郵便報知』がよこした戦地探偵人;福地「戦報採録」を凌駕する犬飼「戦地直報」 ほか)
第5章 西郷、桐野、村田戦死せり(西南戦争の最大の受恵者―山県有朋と川路利良;孤高の勝利者・大久保利通の実像 ほか)
著者等紹介
黄民基[ファンミンギ]
1948年大阪市生まれ。早稲田大学第一政経学部中退。長く東欧報道、北朝鮮報道に携わる傍ら、翻訳、映画評論なども手がける。1990年の東欧レポートで、ポーランド、ルーマニアのエイズ問題を書き、評判となった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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