内容説明
商業主義とナショナリズムに翻弄されるオリンピック。不明確な理念、暗躍する政治家、無批判のメディア、IOCやJOCの堕落…あまりに多すぎる問題点を近代オリンピックに精通したベテランスポーツ・ジャーナリストが抉り出し、本来のスポーツのあり方を問う。
目次
戦争に屈服したオリンピックの理念
一九六四年東京大会と新興国競技大会
ボイコットされたモスクワ大会
マネーファーストに堕したオリンピック
断末魔のIOC
誰のため、何のための二〇二〇年東京大会
「復興オリンピック」の真の狙い
自滅に向かうJOC
これでいいのかオリンピック学習
マスメディアの翼賛的報道と招致に抗した市民
パラリンピックブームへの疑問
スポーツは誰のためのものか
著者等紹介
谷口源太郎[タニグチゲンタロウ]
1938年、鳥取市生まれ。早稲田大学中退。講談社、文藝春秋の週刊誌記者を経て、1985年からフリーランスのスポーツジャーナリスト。新聞、雑誌、テレビ・ラジオを通じて、スポーツを社会的視点から捉えた批評を手がける。1994~95年に『東京新聞』に連載した「スポーツウォッチング」で、1994年度「ミズノ・スポーツライター賞」を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おさむ
38
ベテランスポーツジャーナリストによる五輪批判本。政治利用や金権主義、勝利至上主義などに毒されて、本来の姿を失った五輪の姿を具体事例を交えて浮き彫りにする。もう少し明るい話があってもいい気がするが‥‥、よしとしよう。とりわけ罪深いのは、来年の東京五輪が復興五輪なる名の下で行うことだ。どれだけのフクシマの被災者が五輪開催を望んでいるのか。それよりももっとお金を使うべき事はあるだろう。パラリンピックも、実は戦争で傷ついた元兵士たちを育成して心の回復を目指すという側面があったという指摘にはビックリした。2019/10/27
山口透析鉄
10
これも図書館で借りて読了。中曽根康弘・森喜朗・安倍晋三・麻生太郎・石原慎太郎・小池百合子といった政治屋面々の批判がメインでしょうが、そもそも近代オリンピックの始まりが鼻持ちならないエリート主義と男尊女卑から始まっていては、碌なものにならないのも当然でしょう。JOCもIOCも、既にどうしようもない組織に堕していて、分かってはいてもため息が出そうな1冊でした。 山口香さんみたいな真っ当な方が前面に出ないとダメです。日本の老害はどうしようもないからこそあっという間にここまで傾いたのでしょうし……。2022/10/11
スプリント
8
オリンピックは規模が大きくなりすぎたようですね。 一都市が開催するのは現実的ではないのかもしれません。 4年に一度、全競技の世界選手権を同じ期間で世界各地で開催する形がよいのではないかと考えていまいます。2020/01/13
Mao
6
スポーツは大好き。でも、オリンピックはきな臭くて嫌だと思っていたけれど…ここまでとは。 こんなオリンピックを目指して頑張る選手たちに対し、どう思えば良いのか混乱する。 オリンピックなんてもうやめて、競技ごとのワールドカップで十分なのでは?2019/11/09
Hisashi Tokunaga
2
闇の中身は?「聖火」などオリンピック幻想は尽きない。その聖火も一区間いくらとマネー換算される。ギリシャも一儲けだ。紆余曲折(中止、不参加など)を経ながら全世界がともかく持続してきたこの競技大会の今日的問題は何だろう?「マネーファースト」「国家ファースト」のもたらして来たつけは大きい。「復興オリンピック」と云われながら「原子力緊急事態宣言」は解除されていない。私は、名古屋がそして広島・長崎が嘗て開催立候補した事は忘れられない。あの東条英機氏1942年大日本体育会会長だったことを森喜朗にあげつらうのはどうか?2020/02/06