出版社内容情報
《最優秀賞》受賞作
「たまゆら湾」江口ちかる
シニア向け文学賞を受賞した小説『たまゆら湾』には、少年、明が古本屋の女性店主、美耶子に寄せた恋心が描かれていた。そんな中、その店主は母がモデルではないかという手紙が届く。
《優秀賞》受賞作
「岡山駅から」松本利江/「糸」馬場友紀
選評:小川洋子・平松洋子・松浦寿輝
小川洋子氏評
最優秀賞に選ばれた『たまゆら湾』は、二つの重なり合う小説を無理なく一つの作品におさめていた。Kの書いた小説と、それにまつわる小説部分の文体が見事に書き分けられ、平凡な優しい父親Kの心に潜む、明の姿が生き生きと浮かび上がって見えてくる。
平松洋子氏評
さまざまな創意工夫は、作者にとっての「書く楽しみ」と読者の「読む楽しみ」を共有する挑戦でもあり、気を逸らさせない。…応募作品中、「読ませる面白さ」が頭ひとつ抜きん出ていた。
松浦寿輝氏評
『たまゆら湾』は淡い恋情の物語に、「玉響」という美しい雅語…のイメージを絡めるという発想が、きわめて秀逸だった。枠構造に基づく筋立ても洒落ており、「ほんの一瞬」の記憶のはかなさが、長い人生の歳月を逆照射するあたりに、小説的魅惑がみなぎっている。
内容説明
最優秀賞受賞作 「たまゆら湾」江口ちかる―シニア向け文学賞を受賞した小説『たまゆら湾』には、少年、明が古本屋の女性店主、美耶子に寄せた恋心が描かれていた。そんな中、その店主は母がモデルではないかという手紙が届く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yumiha
44
最優秀賞の「たまゆら湾」とは、なんと美しい雰囲気なのだろう。岡山県にそんな名の湾があるのだろうか?と思いながら読み進めると、実はそれぞれの胸の中にあるのだとか。「一瞬のことがずっと宝物のように胸にあって一生を支える」という「たぷんって水が震える」想いのしずく。そんなしずく…残念ながら、私にはなかった💦優秀作「岡山駅から」「糸」の2作品は、どちらも戦争中の暮らしを描いていた。2021/06/04
まねきねこ
1
うーむ。どうしたことなのかわからないが手元にあった本。かなりマニアックな本なのでしょう。たまゆら湾は静かに静かに昔の恋愛の話が展開していく。どれも落ち着いていて、一瞬のきらめきが描けそうな空気感。2023/08/31