内容説明
ハイチに生を享け、アメリカに暮らす気鋭の女性作家が語る、母国への思い、芸術家の仕事の意義、ディアスポラとして生きる人々、そして、ハイチ大地震のこと―。生命と魂と創造についての根源的な省察。カリブ文学OCMボーカス賞受賞作。
目次
危険を冒して創作せよ―創作する移民芸術家
まっすぐ歩きなさい
私はジャーナリストではない
記憶の娘たち
私は発言する
水の向こう側
二百年祭
もう一つの国
故国への飛行
幽霊を喜び迎える
アケイロポイエートス(人の手で作られたものに非ず)
私たちのゲルニカ
著者等紹介
ダンティカ,エドウィージ[ダンティカ,エドウィージ] [Danticat,Edwidge]
1969年ハイチ生まれ。12歳のときニューヨークへ移住、ブルックリンのハイチ系アメリカ人コミュニティに暮らす。バーナード女子大学卒業、ブラウン大学大学院修了。94年、修士論文として書いた小説『息吹、まなざし、記憶(Breath,Eyes,Memory)』でデビュー。95年、短編集『クリック?クラック!(Krik?Krak!)』で全米図書賞最終候補、98年、『骨狩りのとき(The Farming of Bones)』で米国図書賞受賞、2007年、『愛するものたちへ、別れのとき(Brother,I’m Dying)』で全米批評家協会賞受賞
佐川愛子[サガワアイコ]
1948年生まれ。女子栄養大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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どんぐり
77
ダンティカ4冊目。東日本大震災の1年前に約32万人の死者を出したハイチ地震。世界の最貧国にあったハイチは、この地震でさらに壊滅的な状況に陥った。このエッセイは、地震以前/地震以後のハイチについて、人種、国家、民間信仰のヴードゥー、ジェンダー、および地政学的なアイデンティティや文学をめぐる問題などを記した全12章。ハイチに生まれた〈危険を冒して創作せよ―創作する移民芸術家〉のディアスポラから〈私たちのゲルニカ〉と称するハイチ地震の最終章までの語りは、この国の歴史問題と記憶を呼び起こすものになっている。2021/04/02
橘
9
独裁政権下のハイチに生まれ、米国に移住した著者による、人間や自然災害に苦しめられた人々及びその作品に捧げる書。反体制運動に殉じた若者、暗殺・虐待の犠牲者、ハイチ大地震そして9.11テロまで。生命を削り、危険を冒して創作する覚悟はあるか。自分は未だ、彼の地を知らない。2019/02/13
rabbitrun
7
図書館で北米の若手作家の作品を紹介する企画があり、本書に出合った。読み始めてすぐにいい文章だと気づく。ハイチ出身でニューヨーク在住の女性作家が、祖国への思いを綴りながら創作することの意味を問う。原題の「危険を冒して創作せよ」が本書の内容を端的に表していて素晴らしい。別の邦題に変えられてしまったのが惜しい。2015/02/26