内容説明
画期の新訳『ロリータ』を世に問い、絶賛を博した著者が、満を持して書き下ろす決定版『ロリータ』論、遂に刊行!ナボコフが張りめぐらせた語り/騙りの謎の数々がいま、稀代の読み手の緻密な読解によって、見事に解き明かされていく。知的興奮と批評の醍醐味が溢れる衝撃の一冊。
目次
ナボコフとプロブレム
ロリータとの出会い
見えないロリータ
壁に掛けられた絵
映画の夢
二重露出
「ロー」のトリック
Cの氾濫
翻訳という越境
「私の」部屋
シャーロットとの出会い
ロリータ、ロリータ、ロリータ
著者等紹介
若島正[ワカシマタダシ]
1952年、京都生まれ。京都大学大学院文学研究科教授(小説論、アメリカ文学研究)。『乱視読者の帰還』で本格ミステリ大賞、『乱視読者の英米短篇講義』で読売文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マエダ
83
ナボコフのロリータを読むための実用書である本書。まずは著者の「ロリータ」愛がいい、いかに好きかが文脈から伝わってきて。こちらもを再読へといざなう。一冊の本に対してここまで読み込むということがなかったので,そのような本をつくっていこうと思う。2017/09/03
harass
65
新潮文庫の訳者による『ロリータ』の一般向け解説書。参照で少し読み返す。訳者によると、よくナボコフ作品は原書でないとわかったことにならないという言い方がされるが、第一人者のネイティブの学者でも、この作品はわからないと言っているそうだ。ちなみに、有名な冒頭の一文の書き出し、「我が命の光」 light of my life のlife とは 主人公のペニスの換喩だという。作品中、何度もその意味で life を使っていて、再読して、ナボコフの仕掛けに、ニンマリするのだと。2017/02/11
harass
58
キューブリック版の映画『ロリータ』を恥ずかしながら初視聴。こういうのだっけかと、慌ててこの本を参照。2018/04/11
harass
53
ナボコフの小説『ロリータ』の読解書。こじつけの読解ではなく実に腑に落ちる根拠が仕掛けられていること驚いた。神は細部に宿るとはなるほどと恐れいった。また話法や『信頼出来ない話者』についてを本文の例をあげながら説明があり、近代小説というものの複雑さと企みを意識できて非常に勉強になった。ここまで高度な内容にもかかわらず、一般向けの書き方をしていて軽く読める。新書で読みたい。個人的に、有名な冒頭の『ロリータ、我が命の光』うんぬんのくだりの意味については、のけぞってしまった。ナボコフ、恐るべし……2016/03/09
燃えつきた棒
32
せっかく『ロリータ』を読んだので、哺乳綱鯨偶蹄目ウシ科ウシ亜科ウシの端くれとしては、みんながやっているように反芻してみようではないか。 もし、ウマくいかなくても、ウシなうものは何もないのだから。/ いきなり、チェス・プロブレムが出現して仰天! 本書は、「1 ナボコフとプロブレム」から始まるのだ。 そうだ、twitterの「Problem Paradise」さんは、ひょっとした若島先生ではないだろうか? そういえば、フォロワーに出版社、英米文学、ロシア文学関係者がやたらと多いぞ! いよっ、ビンゴ!/2023/07/13