悲楽観屋サイードの失踪にまつわる奇妙な出来事

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  • サイズ B6判/ページ数 237p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784861821080
  • NDC分類 929.763
  • Cコード C0097

内容説明

祖国にあって祖国を喪失し、敵国の市民として生きる…。総人口の二割に及ぶイスラエル在住パレスチナ人たちの不条理な現実。サイード(幸せな男)という名のありふれたパレスチナ人男性を主人公にイスラエル建国から70年代の中東戦争頃までのパレスチナの現実をシニカルに描く、エドワード・サイード絶賛のパレスチナ文学の代表作。

著者等紹介

ハビービー,エミール[ハビービー,エミール][Habiby,Emile]
1921‐1996。パレスチナの港湾都市ハイファに生まれ、48年イスラエル建国後も同地に留まったイスラエル国籍のアラブ人小説家。工場労働者等を経てパレスチナ共産党機関紙編集者となり、52~72年国会議員を務めるなど、ジャーナリストや政治家としても活躍。常に二重の忘却に曝されたアラブ系イスラエル人の立場から、寡作ながらも痛烈な諧謔精神に満ちた作品を発信し続けた。現代アラブ文学の最先端を切り開く作家としてアラブ世界や欧米ではカナファーニー以上の評価を得ている

山本薫[ヤマモトカオル]
1968年生まれ。アラブ文学研究者。東京外国語大学アラビア語科卒。シリア、エジプトへの長期留学などを経て、2002年に東京外国語大学大学院より文学博士号取得。前イスラム期アラブのならず者詩人(サアーリーク)を中心とした研究活動のほか、パレスチナの映画・音楽・文学の翻訳・紹介を行う。現在、東京外国語大学講師・研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

長谷川透

19
荒唐無稽な物語を連想させる題に加え、冒頭からいきなりサイードが宇宙人に連れていかれて失踪したと言われるのだから、抱腹絶倒のSF小説を予想したが、蓋を開けてみればイスラエル、パレスチナ、中東、欧州を巡るルポルタージュとしても読めるリアリズムの色の濃い小説であった。シオニズム運動や中東戦争など、パレスチナに関する多少の知識は持ち得ていたが、結局ほぼ全ての脚注を参考にしながら読み進めた。自分の無知さ加減と、何百回単位で繰り返される血で血を洗う争いに幾度も心が折れそうになったが読了することができて本当によかった。2013/05/02

きゅー

5
パレスチナ問題に疎いため、読み始めは脚注(これが素晴らしい)、ウィキペディアなどを引きつつヒイヒイ読んでいたが、途中から物語に没入し、とても楽しく読めた。イスラエルに生きる、パレスチナ人サイードの波乱万丈の一生を描いており、何人もの死、連行、暴力が描かれていながら全体としては明るい。この明るさは、作者が感情に溺れること無く、愚者サイードを描ききったところにあると思う。それは『ドン・キホーテ』の道化っぷりと似ていて、読者の意識をもぎ取ろうとするその勢いにやられてしまった。丁寧な本作りも窺え、好感が持てる。2011/11/19

timberbear

4
宗教や歴史のバックグラウンドがなくて理解は無理かなぁ~とオソルオソル読み始めたけど、大丈夫でした。訳者さんの素晴らしい知識と付けてくれた膨大な注釈のおかげで、大事な友達の一人が住んでいるイスラエルという国をほんの少しは理解できたかな。サイードは結局・・・?という謎を妄想するのも楽しい。2014/07/30

ふくろう

4
「こうなってよかったよ、違うふうにならなくて!」:失踪した男(どうやら宇宙人にアブダクトされたらしい)が語る、パレスチナの歴史。「この世に残された最も難しい問題」といわれるパレスチナ問題を、内側から哄笑まじりに語る。突き抜けたペシミストはオプティミストとなる。「俺は不幸だ……」とかいっている人、この本を読むと後悔するよ。2010/03/28

belier

3
イスラエルに残ったパレスチナ人による小説。この作家は共産党の活動家だった人だが、小説の主人公はそんな同胞を密告して生きている。タッチはコミカルだが、皮肉や当てこすりも多い実験的な作風で、理解するには背景知識がないと難しい。そのため翻訳者が手厚い注釈をつけている。詳細な注釈を読みながらなので、本文を読む流れは中断する。だがかなり参考になるし、注釈を読まずに小説を読み進めても理解ができない。物語自体を深く味わうのは無理と思ったが、イスラエルに残ったパレスチナ人の70年代初期までの苦難を垣間見ることができた。2024/11/14

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