内容説明
教育・医療・福祉の各分野から社会全体の変革まで、宗教団体や宗教者による開発への関与が顕在化する現代。アジアとオセアニア各地の開発の現場から、宗教との関係を問い直す。
目次
宗教と開発をめぐる新展開―ポスト世俗化時代の人類学に向けて
第1部 宗教と世俗関係の生成・揺らぎ(開発実践からみた宗教と世俗の境界―現代タイの上座仏教僧によるヘルスケア活動の現場から;関与と逃避の狭間で―ミャンマーにおける出家者の開発実践の変遷と行方;社会的想像のなかの教会・首長・政府―サモア独立国の自殺防止活動を事例とした世俗化をめぐる議論への批判的再検討;マングローブ岸の回心とコミットメント―フィジーにおけるダク村落事業からみたオセアニア神学)
第2部 ソーシャル・キャピタルとしての宗教(宗教とソーシャル・キャピタル論の再検討―ソロモン諸島における教会主導の植林プロジェクトの顛末;自己のためか、他者のためか―タイ南部インド洋津波被災地におけるイスラーム団体の支援活動をめぐって;貧困地域におけるキリスト教の社会運動の展開―釜ヶ崎キリスト教協友会を事例に)
第3部 宗教の公共性をめぐる諸相(ムスリムによる公益活動の展開―中国雲南省昆明市回族社会の事例から;中国のチベット社会における僧院と教育―多面化する「世俗」のなかで;よりよい生を求めて―インド、「不可触民」の解放実践と仏教改宗;女神に付与された複数の公共性―北インドの宗教的な慈善団体とヒンドゥー寺院)
感想・レビュー
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mittsko
6
良書!まさに表題にあるテーマにとりくんだ「若手」人類学者らの論文集(「言説」の語は不要だったのでは)。宗教研究では「社会貢献」「ソーシャル・キャピタル」などの鍵概念で取り組まれてきた領域を、「宗教への転回・回帰」以降の開発学のアプローチを重ねて、人類学者が各々の現地調査からモノグラフを書き寄せる。その数、11本。すばらしい仕事だと思います。ボクの注目点はふたつ。① 宗教(研究)は開発パラダイムをどこまで更新できるか。② 「宗教的側面」(丹羽典生)の独自性がどう把握されているか。ここは一番むずかしいところ…2021/01/23