内容説明
ヴィクトリア朝時代の弁護士アーサー・マンビーと下層階級の女性労働者ハナ・カルウィックとの階級を超えた愛情関係を、写真や日記などの豊富な資料をもとに考察。写真という当時最新のテクノロジーが果たした役割についても論及する。
目次
第1章 アーサーとハナの物語
第2章 女性労働者の肖像
第3章 「手」の隠喩と労働の記号論
第4章 女性労働者の黒さと男性化
第5章 ハナが観たバイロンの悲劇『サルダナパラス』
第6章 階級・ジェンダーの表象と写真の登場
著者等紹介
吉本和弘[ヨシモトカズヒロ]
1985年広島大学大学院地域研究研究科修士課程修了、国際学修士。言語学修士(カリフォルニア大学ディヴィス校)。県立広島大学人間文化学部国際文化学科准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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くさてる
13
19世紀後半のロンドンで出会った弁護士にして詩人のアーサーと最下層の雑役女中のハナの階級を越えた愛情関係、という冒頭の文を読んだときには、まさかこんな内容だとは思わず、途中から目を白黒させて読みました。フェチでS/Mで、歪んでいて欺瞞に満ちた二人の関係は、しかし間違いなく長く続いた生涯をかけた純愛なのです。当時の女性労働者の現実にも触れており、写真図版も多く読みやすいです。それにしても、いやはや事実は小説より奇なりとしか言いようがない興味深い内容でした。面白かった。2020/03/21
dilettante_k
6
2015年刊。階級間婚姻がタブーとされたヴィクトリア朝で下層階級の女中と秘密裏に結婚した弁護士アーサー・マンビー。死後40年を経て開封された遺品に納められたのは、同時代の女性労働者たちと様ざまな姿態に扮した彼の妻、ハナを撮影した膨大な写真だった。女中姿をはじめ、男装などの異装、中流階級風と夫が望むまま撮影され、進んで夫の奴隷であることを求めたハナや女性労働者たちの「汚れた」姿から、マンビーの眼差し=写真に結節したヴィクトリア朝の階級、ジェンダー、人種観を探る。写真による他者観の形成を論じる優れた研究書。2016/01/18
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