内容説明
歩きながら、世界とアメリカの動向、野生と文化との関係、人間と自然とのやりとりなどについて瞑想を深めていた。その思考の過程がつまびらかに描写されているのが、この「ウォーキング」というエッセーである。
著者等紹介
ソロー,ヘンリー・D.[ソロー,ヘンリーD.][Thoreau,Henry David]
1817年マサチューセッツ州コンコードに誕生。ハーヴァード大学卒業後、41年から同人誌『ダイアル』への執筆、編集などにたずさわる。前後してニューイングランドへの小旅行をかさね、その経験から『コンコード川およびメリマック川における一週間』『ケープ・コッド』などの作品を執筆。1845年からウォルデン湖畔に2年間単独で生活し、その記録を『ウォルデン・森の生活』として発表。また、メキシコ戦争批判を契機に『市民的不服従』(1849)を執筆、のちにガンディーやキング牧師に影響を与えた。生涯独身をつらぬき、定職につかず、1862年、44歳で死去
大西直樹[オオニシナオキ]
1948年東京生まれ。国際基督教大学(ICU)教養学部人文科学科、同大学院比較文科研究科卒業。学術博士。アーマスト大学卒業、ハーヴァード大学英米文学科および神学部ヴィジティング・スカラー。ICU人文科学部教授。アメリカ学会常務理事、初期アメリカ学会会長、日本パーシヴァル・ローエル協会理事などを務める
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感想・レビュー
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Koichiro Minematsu
29
当時の文化と野生との中に見いだしたソローらしい文献が垣間見れる、医療関係者の私が言うことではないし、正しくもないが、何となく、何となく、思ったのは砂漠で生きる経験は、人の精神面を強くできるのではないかと思う。もちろん今では良い薬もあるので、薬物療法は大事ですが。自然に身を委ね、それから得られる強靭な力や癒しも、心身に良いと思う。これからのうっとうしい季節は過ごしやすさを求めないと。2019/06/24
yukinden
4
自然の擁護、絶対的自由と野生のために。 文明と自然とひとりの人間。 大海原や砂漠、荒野を与えたまえ!2011/06/17
Mill
2
ソローは野山を歩き回った。西に向かって歩く事を良しとした。 ソローにしても、オースターにしても「西に向かう」というのはアメリカ人の「明白な宿命」としてあるのかもしれないな、と考えた。
にしざわ
1
散歩というか「ウォーキング」、訳語を借りれば「そぞろ歩き」について語られるエッセイなのだが、ウォーキングの話をしているのは序盤だけで、あとは飛躍してひたすら「文化・社会・政治・知識から離れて野生へ飛び込め」、「森に入れ」、そして「西へ行け」という話が語られ、その勢いがよかった。これが書かれた一八五〇年代という時代のことを考えると、この前観た『ファースト・カウ』の森の風景が思い出されて、あの二人の友情にもあらためてぐっときた。2024/01/07
ピリカ・ラザンギ
0
ソローが街の諸々から離れて自然(野生)を歩き賛美する随筆。開拓されたものへの批判と未開なものへの希望。 後書きを読みどういう時代に書かれたのかがわかると楽しい。自然回帰的だが反知性ではなく衒学的というのは納得。「ヘブライ語を学ぶには遅いスラングの方が良い」と言いながら聖書からの引用が多い。西側への開拓という側面があるが開拓がもたらす物についての無自覚さ、というのは時代を感じさせる。J・J・ルソーの随筆を思い出した。あっちの方はペシミスティックな内省だけど。2017/01/06