内容説明
ロシア兵捕虜の10年後、ドイツ兵捕虜も松山にいた―。1914年11月、第一次世界大戦の捕虜としてやってきた彼らは、窮屈な収容所生活の中、ちょっぴりのユーモアと反骨精神で音楽、演劇、スポーツなど多彩な活動をおこなった。発禁命令にもめげずひそかに回覧された収容所新聞『ラーガーフォイアー(収容所の火)』は、世界各地の旅行記や日本文化の解説も含む、彼らの知られざる文化活動と生活の記録である。
目次
はじめに―松山に残るドイツ兵捕虜の痕跡
第1章 青島戦争と松山俘虜収容所
第2章 収容所における諸活動
第3章 戦争の記録
第4章 日本と松山
第5章 世界の国々(外国旅行記と諸地域の事情)
終章
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
BLACK無糖好き
19
第一次世界大戦での日本の青島攻略によって捕虜となったドイツ兵を収容する松山収容所の歴史。捕虜たちが刊行していた収容所新聞『ラーガーフォイアー』の読解を中心に、収容所での文化活動や、当時のドイツ兵捕虜から見た日本の風習、戦争観なども垣間見れる。又、捕虜たちの学習意欲も感じる事ができる。捕虜の中には知識人やビジネス経験豊富な人材もいて、寄稿文にはアカデミックな論調のものも目につく。本書は郷土史的な趣きが強いのかと思ったが、戦争捕虜の扱いについての学術的な論考も随所に見られ、歴史書としても貴重な作品。2020/02/04