出版社内容情報
古代国家の仏教導入後、近畿地方に次いで早くから造営されてきた吉備地域の寺院。瓦の系譜や出土遺物、立地、建物配置などから、古代寺院の造営の背景を探り、蘇我氏や秦氏などの渡来系の人々の影響を推測する。
飛鳥・白鳳・奈良時代の吉備の58古代寺院を一挙掲載した初の解説書。
第一章 古代寺院と仏教
第二章 飛鳥時代創建の寺院
第三章 白鳳時代創建の寺院
第一節 美作
第二節 備前
第三節 備中
第四節 備後
第四章 奈良時代創建の寺院
第一節 国分寺跡・国分尼寺跡
第二節 その他の寺院
第五章 飛鳥・白鳳時代寺院の様相
第六章 国分寺の成立と展開
第一節 国分寺の創建
第二節 国分寺の展開
―美作を中心として―
私が古代寺院跡とはじめてかかわったのは、一九七七年から始まった津山市教育委員会の美作国分寺跡の発掘調査においてであった。当初副担当として参加予定であったが、種々の事情が重なり、結果的に正担当になってしまった。当時の私は未だ発掘調査の経験が浅く、調査は最初から失敗や試行錯誤の連続であった。あるとき、調査区を掘り下げていたら、途中でそれが基壇版築をぶちぬいていることを教えられ、仰天したこともあった。しかし、奈良国立文化財研究所の強力な指導を得て、何とか伽藍配置と寺域の確認という当初の目的を果たすことができた。
大学で文献史学を学んだ私が古代寺院跡について何ほどかものがいえるのは、一九七三年度岡山大学法文学部に聴講して、近藤義郎先生に考古学の手ほどきを受けたおかげである。毎週土曜日、朝から夕方まで、実習や講義など考古学の基礎を教えていただいたが、そのような変則的なカリキュラムが、私のために無理をして組まれたものであることを最近になって知った。その近藤先生から本書の執筆を奨めていただいた。この間の先生の学恩に改めて感謝申しあげる。 (湊 哲夫)
亀田が岡山に来たのが一九八〇年である。それから二五年。今回このような形で、湊さんと『吉備の古代寺院』を吉備人出版から刊行できるのは、故 鎌木義昌先生と近藤義郎先生のお陰である。特に近藤先生には執筆の機会を与えていただいた。まず、感謝したい。
本書を執筆する中で、中央との関係、朝鮮半島との関係、他地域との関係、吉備内部の関係、そして瓦や伽藍配置の多様性などを改めて認識できたと思う。また、実際の寺院造営を「時間」・「空間」・「人」を意識することによっていろいろわかったように思う。勉強になった。 (亀田修一)
飛鳥・白鳳・奈良時代の吉備の58古代寺院を一挙掲載した初の解説書。