内容説明
男と過す夜の安らかなときめき。あじさいホテルの、あの部屋だけが、私と彼の世界。恋というものは、ある種の、かるいたわむれ心だった。それなのに、桐生の色ひといろに染めあげられすぎてる―。一行一行を舐る愉悦―田辺聖子の恋愛小説。復刊長編小説第二弾。
著者等紹介
田辺聖子[タナベセイコ]
1928年、大阪府生まれ。樟蔭女子専門学校国文科卒業。同専門学校在学中に終戦を迎える。文芸同人「文藝首都」「大阪文学」に所属。1958年初の単行本『花狩』刊行。放送作家として活躍。1964年『感傷旅行(センチメンタル・ジャーニイ)』で第五〇回芥川賞受賞。1987年『花衣ぬぐやまつわる…わが愛の杉田久女』で第二六回女流文学賞受賞。1993年『ひねくれ一茶』で第二七回吉川英治文学賞受賞。1994年第四二回菊池寛賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
69
ハイミスの切ない恋愛ですが面白かったです。32歳独身OL・亜希子は妻と別居中の男・桐生と付き合っています。桐生との仲が深まれば他の男性にふらりといったり、亜希子の心の動きが変化するのに共感を覚えます。恋は順調でも相手に妻がいるというのは不安になるというもの。順調な恋が空回りし、歯車が軋みの音を立てるようになってからの亜希子は取り残されているような気がしてなりませんでした。何もかも上手くいかず、一人で泣く場所もないのが辛かったです。奄美の空気が亜希子を抱きしめているようでした。2015/05/05
しょこら★
25
綺麗な装丁に誘われて。こんなに古いお話だったとは… 今でいうアラサーの、恋のお話。バブル期かな、今はいつまでも女の子とか、女子とかそういうキャピキャピした?変に若々しい感じだけど。すごく大人っぽくて、女の人って感じ。でも男の人に媚びるところはやけに子供っぽくて。けっこうプライド高くて。同性同士、比べて張り合ったりするのは同じだな。あと結婚とか、子供とか女性はいつも追い詰められる。共感はしなかったけど、読んでて文体とかが心地よかった。2015/03/06
クリママ
18
1972年に単行本になり、この本は、それに修正を加えたもの。素敵な装丁のシリーズ本。今は死語となったハイミスの恋愛。相手は妻と別居中。恋愛の様々なことに思い当たることがあるものの、中盤で物語が動き出すまでがちょっと長いし、その後の展開も好ましいものではなかった。田辺聖子は大好きで、○十年前のOL時代によく読んだ。この本も読んだのかもしれない。もっと感情移入していたのかもしれない。でも、今となっては、ちょっと厳しかった。2017/02/25
ユーリ
5
主人公が苦手なタイプの女性だけど、ストーリーはおもしろいので最後まで読めました。32歳独身女性の亜希子の周りには、他にもいい歳をして独身の男女がたくさん。一口に行き遅れているといっても、それぞれ事情も性格も色々。群像劇として楽しめました。人の死をずいぶんと軽く書いていることが気になりましたが…2013/10/03
バーベナ
5
順調だったはずの恋が過ぎ去ってしまって、心の余裕がなくなると、仕事も男友達とのつきあいも、すべてがまるでドミノ倒しのようにうまくいかなくなる。そのうえ自宅暮らしには、思い切り泣く場所もない。誰のせいでもないけれど、なにもかも捨ててひとりになりたい、そう思う瞬間ってある。亜希子が奄美にたどり着いたとき、思わず抱きしめたくなった。2011/12/07
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