感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
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「液状化」というのは印象的な題だが、初老の作者の身体と心、身辺が揺れ動くことを表現しているそうだ。本当に素晴らしい歌集で、あまり知られずに読まれていないのは惜しいと思う。自分が老いる悲しみを胸に秘めながら、日々の生活を慈しむように歌にしている姿勢に胸が熱くなった。辛い現実に直面しながら、ユーモアを忘れない作風にも共感した。クスリと笑える歌も多い。絶唱と呼べるのは老いが深まり、やがてこの世を去っていく作者の母のことを詠んだ一連の歌だ。「説明はできぬがわれは耐えている、そう耐えているのだ冬の夜半」→2016/02/07