出版社内容情報
中世ヨーロッパの製法に従い日本の風呂場で羊皮紙を作る
独学で製法・文化を探究し、羊皮紙発祥の地ペルガモンの職人に認められる世界的専門家になった著者の奮闘記。
[目次]
独りの羊皮紙職人が世界の羊皮紙家族に出会うまで
第一章 羊皮紙づくりのプレリュード
第二章 自宅の風呂場が工房に! 試行錯誤の羊皮紙づくり
第三章 よりよい羊皮紙を目指して
第四章 羊皮紙研鑽の旅
第五章 大英図書館での羊皮紙研究
第六章 羊皮紙の聖地ペルガモンへ
第七章 そして「羊皮紙専門家」へ
【巻末付録】「犬ガムで羊皮紙づくりプチ体験」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mae.dat
259
これは良い大人の自由研究。村上春樹著『羊をめぐる冒険』のオマージュタイトルなのね。羊皮紙。存在は認識しておりますが、文化的にも大変遠い存在。それを1から手作りしてみようと言う、ただただ興味本位、好奇心だけに突き動かされて実行に移すその行動力よ。そして失敗を重ねながらも、徐々に知識が溜まり、技術が向上していくのね。そして各国で知見、人との出会いを深めて行くよ。巻末付録に犬ガム(牛の皮)を用いたプチ体験方法も載せられており、簡易的な追体験も可能かも知れませぬ。手順は僅か見開き2ページたったの9ステップ‼︎2025/01/25
パトラッシュ
150
前著『羊皮紙の世界』は西洋史の裏側を記録し続けた羊皮紙の歴史を描いていたが、本書は著者がなぜ羊皮紙に沼ったのかを語る自伝。自己満足の本かと思われるかもしれないが、いやいや滅法面白い。アラビア書道を書きたくて作り方を調べ、自宅の風呂場で悪臭にまみれながら羊の生皮と格闘し、ついには本業になってしまうのだから。それだけではすまず中東へ研鑽の旅を重ね、死海文書やケルズの書を直接見て、ついにはトルコで制作を教えるまでになるとは。好きこそものの上手なれというが、好きでたまらない道を極める幸福は読者も幸せにしてくれる。2025/04/11
☆よいこ
93
分類584。仕事でも学業でもなく只々好きで羊皮紙を手作りしちゃった著者の、羊皮紙にかける情熱と試行錯誤の日々を語る。海外の専門家に直接インタビューしたり工房を訪ねる行動力が熱い▽作業場は自宅アパートの風呂場。実際の作業は羊の皮との戦いで肉体労働も甚だしい▽自分の興味関心を深め学ぶだけでなく、学んだことをネットサイトにまとめて発信したりアウトプットも上手い。いわゆる「研究者」ではなく「プロ趣味人」として羊皮紙作りを極めつつ、羊皮紙文化を広める活動をされているのがすごい。面白かった。2024.12刊2025/04/15
帽子を編みます
50
〜風呂場からエルサレム、大英図書館にペルガモンまで。〜、面白い!私は羊皮紙に特に関心はなかったのですが、なぜかこの本を手に取り口絵に写本(著者作のもの多数、これもすごい!)を見て読み始めました。なんという機動力!アラビア書道から羊皮紙への興味、自作、世界各国への探求の旅。軽快な語り口に「私も作ってみようかな」の気分になった方、犬用ガムで簡易な紙を作る方法まで載っています。今始めれば日本における羊皮紙界の重鎮になれること間違いなし!きっと著者が的確なアドバイスをくれることでしょう。さぁ、あなたも羊皮紙家族!2025/02/05
たまきら
40
好きが高じて専門家にー自分もニホンミツバチのことを調べているうちに飼い始めた人間なので、ジャンルは違えども心は同士。大変楽しく読ませていただきました。原皮のエピソードではあらあら八木さん、うちの区にくれば原皮屋さんだらけなのに…なんて思ったり。まあ、豚ばかりだからダメかな?でも、ここで作業するなら悪臭で叱られることは少ないと思うの。イギリスもマグナ・カルタの時代以前から続けられてきた羊皮紙による法典記録を2016年に廃止。職人技を受け継ぐってどこでも大変です…。は~面白かった!2025/04/21