内容説明
生命科学・生殖医療の進展はめざましい。生殖医療は、確かに不妊で悩むカップル、「子どもがもてない」とあきらめていた人たちへの福音である。しかし問題は、そこから始まる。現在、不妊症や少子化を背景に代理出産が注目されているが、それは男女の産み分けや障害児の排除へつながる可能性がある。そして、無制限な生殖医療の応用がはじまり、その果てにデザイナー・ベビーが誕生しないとも限らない。いったい、「いのち」の操作は、どこまで許されるべきなのか。遺伝子操作を経た新しい人類誕生の扉はすでに叩かれている。われわれは明瞭な意志をもって「選択」すべき岐路に立たされている。いのちとは何か、人間とは何か…。いま、われわれに必要なのは、豊かな想像力である。本書は、日本不妊学会の理事長を務めた第一人者が、生殖医療の現状と問題点を分かりやすく解説し、どこまで許されるのかを問う。
目次
序章 ヒトがヒトをつくることについて(フィクションから考える「いのち」のかたち;鉄腕アトムと人工生命)
第1章 なぜ、いま考えなければならないのか(すばらしくも勇ましき新世界;坂の上に立つわたしたち ほか)
第2章 いま、「いのち」のなにが問題なのか(きっかけは不妊症治療;不妊症対策の変遷 ほか)
第3章 私が考える「いのち」の原則(生命倫理の四原則;日本人の古層と「いのち」の倫理 ほか)
終章 人類の未来とわれわれの「選択」(「アイスマン」の衝撃;「人間圏」という座標軸 ほか)
著者等紹介
伊藤晴夫[イトウハルオ]
1938年群馬県高崎市生まれ。1958年東京大学教養学部理科II類入学。1960年千葉大学医学部3年次入学。1969年千葉大学大学院医学研究科修了。1975年より2年間、シカゴ大学Nephrology (F.L.Coe教授)に留学。千葉大学助教授(泌尿器科学)、帝京大学市原病院教授(泌尿器科学)、千葉大学医学部教授(泌尿器科学)を経て2001年から2003年まで、千葉大学医学部付属病院病院長。また、日本不妊学会理事長、日本アンドロロジー学会理事長、日本受精着床学会副理事長、日本泌尿器科学会理事、日本医学会評議員、日本腎臓学会評議員、日本癌治療学会評議員などを歴任。城西国際大学客員教授、NPO法人「千葉健康づくり研究ネットワーク」理事長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。