出版社内容情報
排除したい。だからこそ見えづらくする。街を歩いていても気づきにくい。目をこらさないと見えてこない。こっそりと進められていく排除のシステム。誰が排除されているのか。どうやって排除しているのか。11人の論客がそれぞれの専門分野の状況を読み解く。
内容説明
街を歩いていても気づきにくいし、目をこらさないと見えてこない。人々の目に付けば議論になる。それを避けるために、ひっそりと、こっそりと、進められていく排除のシステム。誰が排除されているのか。どうやって排除しているのか。11人の論客がそれぞれの専門分野の状況を読み解く。
目次
かたちが命令する アート(五十嵐太郎)
困窮に至るまでの、そして困窮してからの排除 弱者(雨宮処凛)
賃労働・家族・福祉からの排除あるいは脱出 貧困(今岡直之)
住みたい部屋で暮らせない シングルマザー(葛西リサ)
学校という排除空間 学校(渋井哲也)
「五輪やるから出ていけ」の現在地 社会(武田砂鉄)
わたしたちはベンチかもしれない 公共財(田中元子)
変質するヘイト。そして微かな希望 在日(朴順梨)
インクルーシブ教育は本当に可能か―障害者と排除 障害者(福原麻希)
排除アートは増殖し続けている 社会(森達也)
排除と偏見を逆手にとる 外国人(安田浩一)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
105
排除と差別という論点から、教育、労働、障害者、貧困、外国人などの事例が紹介される。それらを象徴する存在が「排除ベンチ」なんだろう。命令や禁止の言葉を使わず、恰もアートのようにして排除を実現する巧妙さは、私が行動経済学に覚える胡散臭さと通ずるものがある。森達也さんは、仕切り入りベンチなどの排除アートは日本が圧倒的に多いのに、多くの日本人がそのことに気付いていないと言う。差別的なイデオロギーが跋扈することは問題だが、それ以上に、多くの人が無自覚なまま、潜在的に差別や排除に加担していることが怖ろしい。2024/11/07
ネギっ子gen
72
【戦後からは78年が過ぎた。だから煩悶する。吐息をつきたくなる。日本はどれほどに成熟したのか……】街を歩いていても気づきにくい。目をこらさないと見えない。議論になることを避けるためにひっそりと、こっそりと進められていく「排除」と「差別」のシステム。11人の論客がそれぞれの専門分野の状況を読み解き、問題提起した書。編者の森達也は書く。<集団に馴染まない少数者は異物として排除したくなる。/仕切り入りベンチを筆頭に排除アートを見かける頻度については、日本は圧倒的だ。ところが日本の多くの人にその自覚はない>と。⇒2024/03/12
とよぽん
59
タイトルが示唆する意味に「あ、これは読まなくちゃ」と思って。予想通りの内容と、さらに自分が知らない分野?での差別や排除の実態と歴史に触れて収穫の多い読書になった。2023年最後の1冊として、大変重い問題を扱った良書だった。森 達也さんの文章と、渋井哲也さん「学校という排除空間」、福原麻希さん「インクルーシブ教育は本当に可能か」が特に強く印象に残った。シングルマザーの住居貧困問題についての葛西リサさんの分析と主張にも、なるほどと思った。私が住んでいる市でも、昨年市役所前に仕切りベンチが設置された。2023/12/31
クリママ
43
近くの公園にある真ん中にひじ掛けの付いたベンチ、オシャレなのに座り心地の悪いベンチが排除ベンチだということを、この本で知った。11人の筆者による日本における排除。貧困、シングルマザー、ヘイト… 学校教育で排除される子供たちは、その流れを教師が作っている。また、東京五輪に伴う神宮外苑の再開発についての考察は、同感しかない。各人の能力、努力をどう捉えていくのかは難しい問題だが、一部の利益を生み出すのではなく、誰もが最低限の生活を送れる社会を目指す国であってほしい。無自覚のまま過ごしてきたことを教えられた良書。2025/01/18
re;
27
生物は中立を維持することが困難だ。常に揺れ動きながら中立を目指してバランスを取ろうとする。それは意思という大きな塊ではなく素粒子レベルで。そこには善と悪が生まれ、多と少が存在し、絶対値はなく常にその割合は変化する。当事者の言葉を聞くのは大事だ。でもそれは全貌ではない。切り取った情報で行われる判断には常に偏りがあることを忘れてはいけない。中立であることはどちらにも寄り添う反面、どちらにも寄り添わないという側面もある。何はともあれ、その人の選ぶ生き方、思想。それを批判しないようにしたいと思った。2024/04/27
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