目次
1 シベリア記(明治初期の沿海州における日本・朝鮮・ロシアの出会い―瀬脇寿人の『ウラジオストク見聞雑誌』をめぐって;ウラジオストクにおける日本の「官」と「民」;シベリアに生きた一日本人―都築小三治のこと;わたしのシベリア抑留記から)
2 シベリア随想(ウオツカの効用;猟犬アブレックの死;ニーナの思い出;日本人とシベリア女性;ユカギルの葬制;シベリア諸民族と客の歓待;シベリア精霊像収集の旅)
3 加藤九祚の歩んだ道(履歴のあらまし―人間関係的試み;補遺・その後の履歴)
感想・レビュー
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aika
42
過酷なシベリア抑留の経験をも「留学」と捉えた著者が、膨大な歴史資料から紐解いたロシアの沿海州~シベリアの実像が感触を持って伝わってきます。著者が光を当てるのは、身売りの為にウラジオストクへ渡った女性たちや、日露戦争の最中にでもシベリア住民から愛された写真技師・都筑小三治など、名もなき人々の姿。世界の平和と安寧を願い続けた著者の真摯さが胸を打ちます。なんと言っても、自身のシベリア抑留というあまりにも凄惨な出来事を経てもなお「みんなと一緒に、明るい方を向いて生きていこう。」と綴る深い人間性に感銘を受けました。2021/02/15