内容説明
擾乱の1970年代前後に、新木正人はリトルマガジンに拠り、特異な文体を駆使する書き手として鮮烈な印象を残しながらも、その後長い沈黙の中にあった。いまも独自の光芒を放つその作品群に加え、最新の論考をも収めた初の評論集。
目次
1(天使の誘惑 南下不沈戦艦幻の大和;黛ジュン;更級日記の少女 日本浪曼派についての試論;赤い靴;遠い意志)
2(中森明菜;自由意志とは潜在意識の奴隷にすぎないのか;ただの浪漫とただの理性がそこにころがっている)
著者等紹介
新木正人[シンキマサト]
1946年8月13日埼玉県大宮市生まれ。1968年「遠くまで行くんだ…」編集委員会。1975年「遠い意志」編集委員会。1981年公立高等学校全日制課程教諭。1985年公立高等学校定時制課程教諭。2001年専門学校講師。2016年4月死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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再読。68年前後、ポテンツを低くした形で拡散/浸透してゆく「日本浪曼派」的なイロニーに対して、単純な否定/批判はより一層その状況を強化するだけである、問題は、「浪漫派の内に徹底的に浸りきり、底にもぐり、身体を回転させ、内から根こそぎに」すること、それ故に新木の「異様な」文体(=「雑文」)は、そのような浪漫派的美意識に近接しながらもそれから身を引き離す、イロニーではなくてユーモアとして変化させてゆくこと、その一点に賭けられる。それは、「日本」という「対象a」に「少女」を対置し続けることであったと言える。2023/02/12
hiratax
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亀和田武の本で「遠くまで行くんだ…」に言及されており急に思い出し取り寄せた。著者は「遠くまで行くんだ…」のメインン執筆者の一人で、長く定時制高校の教師を務め、のちに専門学校の講師となり、癌で没した。永遠の文学青年というか、考え続けること、読み続けることが行われている。旧友の小阪修平とは30年間で5回くらい会ったと。5回しか会えないのかと、刹那を思う。2017/02/13