内容説明
D・M・ディヴァインを凌駕する英国の本格派作家。新時代の巨匠ハリー・カーマイケル、満を持しての日本初紹介!男女関係という“千古不易の謎”にクイン&パイパーの名コンビが迫る。
著者等紹介
カーマイケル,ハリー[カーマイケル,ハリー] [Carmichael,Harry]
1908‐1979。本名レオポルド・ホーレス・オグノール。別名ハートリー・ハワード。カナダ、モントリオール生まれ。英国内でジャーナリストやエンジニアとして働き、1932年に結婚して三人の子をもうける。51年、ハートリー・ハワード名義で“The Last Appointment”を発表し、作家デビュー。二つのペンネームを使い分け、生涯に85作のミステリ長編を書いた
藤盛千夏[フジモリチカ]
小樽商科大学商学部卒。銀行勤務などを経て、インターカレッジ札幌にて翻訳を学ぶ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スパシーバ@日日是決戦
90
B (2015年)<1970年> 「突然、犬が目の前に現れてそれを避けようとバンドルを切ったら次に男が出てきたんです。彼を避けようと全力を尽くしたんですが、間に合いませんでした..」。本格ミステリの空白を埋める英国本格派最後の砦の初翻訳。50年代以後はハード・ボイルドやスリラー、社会派ミステリが台頭しトリックやサプライズ・エンディングを重視する作家、作品が激減するなかドミニク・ディヴァインより長期間に渡り大量の良作を生み出したとのこと。ものの見事に解決の糸口を見逃してしまった小生にドライ・マティーニを。2016/11/08
ネコベス
32
新聞記者のクインの知人メルヴィルは飲酒運転で事故を起こして被害者は死亡。メルヴィルは禁固刑を受けるがメルヴィルの妻エレンが、実は運転していたのは自分だと電話でクインに告白した後ガス中毒で亡くなる。エレンが妊娠していた事が発覚して、直前に電話していたクインは警察から疑われるが、相棒パイパーの力を借りて事件の真相を探る。トリック自体はシンプルだが、誰かが嘘をついているが誰が何のために事実を歪曲しているのかが終盤まで分からず、あれこれ推理しながら楽しく読めた。やさぐれた皮肉屋クインのキャラクターが良い。2018/06/19
geshi
29
シリーズものとして続いている作品のうち一作を抜き出したから、クインとパイパーの関係性や心の内をそのままセリフに出す手法が少しとっつきにくかった。ストーリーテリングが円熟の域に達していて、前半は事件が起こり疑惑が生まれるまで、後半は二人がそれぞれに聞き込みを行う捜査を描き、複雑なメルヴィル夫妻の様相が多角的に見えてくる。シンプルにして切れ味のいいトリックで噛み合わない証言の隙をつき、見えていた事件の様相を反転させる。題名も読後に成程と頷けるいい付け方。2015/12/29
本木英朗
23
カナダ生まれの作者は英米両国で二つのペンネームを使い分け80以上の作品を遺したという。日本ではこれが本邦初訳となる。帯に「ディヴァインを凌駕する」とあり、解説でも頻繁に比較されるのだが、この判断は読者次第か。私自身はこの一作のみをもって超えてるとは判断できないが、髣髴とさせるのは間違いないです。シリアスで錯綜した人間関係が、単純な事件を読み応えのある、かつトリッキーなものに成立させている、という点において。少なくとも続けてもう2、3作は同シリーズの邦訳を心待ちにしたい佳作であったと思います。2015/11/08
飛鳥栄司@がんサバイバー
18
一点突破の正統派本格ミステリ。これはなかなか面白かった。ストーリー展開がミスリードを誘う作りになっていて、パイパーが関係者へのインタビューで集めた証言と証拠がいかにもな雰囲気を形勢している。情況証拠的にはあまりにもある容疑者へ収点しており、ひっくり返しようがなく見える。しかし「会ったことがない」という単純なことを追い詰めていっただけで、こうも視界が変わるのかと唸らされる。時代を感じさせるトリックではあるが、これが一点突破の醍醐味でもある。本シリーズは、多くの作品があるようなので、続けて翻訳されて欲しい。2015/09/08