内容説明
村上春樹は、あれほど作品が読まれているにもかかわらず、言及するにたる「作家論」がほんのわずかしか書かれていない点で日本近代文学史上、稀な作家である。「作家論を生まない村上春樹」に、近代小説の本質、村上春樹の作品の特質、時代背景、さらに村上春樹という人物とその世界認識など、多面的な光をあて、作家村上春樹の軌跡とこれからについて論じる。
目次
村上春樹作品を扱う視点
村上春樹の文章
助詞の「は」
描写とイメージ
村上作品の「書法」
短編小説と長編小説
「螢」と『ノルウェーの森』
一九八〇年代の作家村上春樹
『風の歌を聴け』・初期三部作
「学園闘争」の時代〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Isamash
18
紺野薫・桜美林大学准教授の2013年出版書籍。村上春樹は短編も長編もタッチが殆ど同じ。短長編に関わらず近代小説の構造性や多層性に欠ける。音楽に例えれば単旋律・単声的で転調もなくソナタ形式の様な構成とも無縁。彼の長編を読む体験は延々とグレゴリオ聖歌を聴くことに似る。学生時代に政治・倫理的正統派に対して感じていたコンプレックスの解毒剤を作品に見出し解放感を感じた。人々の文学的欲求でなく一般的欲求にアピールしたがゆえに売れた。更に海外の読者の期待する日本像或いは日本人像を提供とある。一部納得も本当にそれだけか?2022/04/14
3J28
1
はっきり言って、良書とは言い難い。村上春樹が「言うべきことを持たぬ」作家だとしても、それ自体が様々な文脈で検討されているし、それどころか政治的な射程も数々の論者が指摘している。少なくとも、それへのある程度の反論がなければ、それは根拠なしの自己主張になってしまう。途中加藤典洋の引用があったが、彼の研究のどこを読んだらこのように都合よく援用できるのか気が知れない。断章主義にも限度がある。ハンナ・アーレントやヘーゲルの引用も、「軽い」と村上春樹をさんざん酷評するもののやり方としては、あまりにも軽すぎる。2022/02/01
ショコラ
1
途中まで読んだけど、この本は村上春樹をきちんと読んでから読まないと分からないし、もったいない気がする。2019/10/05