内容説明
本書は、日本の「進歩的」戦後思想と「保守的」戦後政治の宿す「虚妄」を鋭く衝いた論集。補章として、丸山真男への反批判を加え、「解題」で論文発表当時の反響を記す。
目次
第1部(国家対人間の基本問題―わが『国家悪』における一つの実践的帰結;「大日本言論報国会」とは何であったか―思想史の方法に関する一つのノート;祖国喪失の日本的状況―「戦後民主主義」の虚妄を衝く;日本民族における忠誠問題―『国家論―政治学批判』こそ今世紀最大の著作;愛国心について―その展望と問題点;この制度をまず破壊せよ―国家・戦争そして人間;わが女性史観―家庭論争を超えるもの;日本民族について―平和主義は個人原理を超える)
第2部(日本民族における兵役拒否―“平和運動”の反省から抵抗の論理へ;国家原理と民主原理の相剋―経済学的・軍事科学的思惟への抵抗;国家とは何なのか―核時代における重ねての問いかけ;暴力論―一つの力学的人間観;日米関係をどうみるか―保守政権における最大の虚妄;社会主義と国民主義)
著者等紹介
大熊信行[オオクマノブユキ]
1893年山形県米沢市に生まる。東京商大卒、英独米に留学。小樽高商、高岡高商教授を歴任。昭和19年東北帝大講師。戦後、山形県地労委会長、富山大学教授(経済学部長)、神奈川大学教授、創価大学教授を歴任。経済学博士。1977年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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渋野辺
3
大熊信行氏は進歩派であったのであり、本書は戦後民主主義批判の代表的な著作の一つとされている。氏は平和主義を名乗る護憲派でありながら、日本民族としての愛国心、つまり「祖国」への忠誠心を語っている。ぼくにはそれが驚きであった。また、平和憲法を有するということが近代国家において何を意味するのか、という国家と国民の関係を氏は国家主権に対する「抵抗」という概念から規定し、「半」独立国家たる日本および日本人が真の独立へと向かうために、戦後民主主義の「虚妄」を明らかにしたのである。2014/10/27
くらげかも
1
(昭和二十年八月十五日以降の)「軍事占領下の約七年の経験もまた戦争の経験そのものであったと主張する」という言葉の重みたるや。近々再読予定。2024/03/14