内容説明
『極秘戦史』の隠蔽・改竄史料である『公刊戦史』に基づいて書かれた『坂の上の雲』―それは、軍上層と新聞によって捏造された「日露の海戦像」の最もスマートな完成型である。司馬史観は「国の形」の範となるか?TV化のブームに見える“現代の危うさ”を衝く。
目次
第1章 極秘戦史のインパクト
第2章 「偉大な東郷」像
第3章 丁字戦法か、水雷奇襲隊作戦か
第4章 神話を崩した吉田昭彦の仕事
第5章 海戦直後から創造された伝説
第6章 松山スクールのこと
第7章 『坂の上の雲』への道
終章 「青い天の…白い雲」とは
著者等紹介
木村勲[キムライサオ]
1943年、静岡県生まれ。一橋大学社会学部卒、同大学院社会学研究科修士課程修了。朝日新聞学芸部記者(近現代史・近代文学担当)を経て、現在、神戸松蔭女子学院大学文学部総合文芸学科教授。専攻は日本近代思想史・メディア論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しゅんのすけ
1
本書は、『坂の上の雲』の主人公である秋山真之が小説で書かれているような「天才」戦略家ではなく、判断に誤りが多い参謀で、作戦の中枢から外されていたと指摘する。 本書の根拠は、1981年に明らかになった『極秘・明治三十七八年海戦史』である。司馬遼太郎の『坂の上の雲』の執筆時には『極秘戦史』の存在は非公開だったので、小説と史実とのギャップを追求するのは酷かもしれないが、「司馬史観」が当然の史実として語られる風潮に鑑みると、この種の指摘も有意義なものであろう。2020/01/02
ひろ
1
日露海戦の新資料による筆者の解説・主張はほんのわずか。あとは老人の愚痴のような内容。残念。2012/04/13