内容説明
楽屋から抜け出すことができたのはだれだ?船上での窃盗、電車での殺人未遂、舞台上の変死…。休暇中のアレン警部に事件が次々とふりかかる。該博な演劇の知識を存分に発揮した、劇場ミステリの逸品。
著者等紹介
マーシュ,ナイオ[マーシュ,ナイオ][Marsh,Ngaio]
1895~1982。ニュージーランドに生まれる。高校時代に学園誌の編集、戯曲の執筆や演出に携わった後、美術大学に進学。卒業後はイギリスの劇団に戯曲作家、女優、演出家として参加し、影響を受けて執筆したのが既刊『アレン警部登場』(1934)である。続く『殺人者登場』(35)、『病院殺人事件』(35、Jellett Henryとの合作)で賞賛を受け、人気作家となった。ストーリーや人物設定・描写に重きを置いた作風には定評があり、クリスティ、セイヤーズ、アリンガムと共に、黄金時代の四大女性作家とされている
岩佐薫子[イワサカオルコ]
1964年生まれ。北海道大学卒業。インターカレッジ札幌在籍中。札幌市在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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geshi
26
題名通り、まさしく黄金期のヴィンテージもののミステリ。序盤で容疑者全員が苗字・名前入り混じって並べられるので、頭に入りにくい。殺人場面はショッキングだが、その後は捜査と聞き取りが繰り広げられるので、展開としては地味。誰が凶器を細工できたのか?の機会を徹底して検証し、アリバイや立ち位置を考えながら読んでいく、良くも悪くも昔ながらの推理小説。劇場内でまとめるかと思っていたら、ニュージーランドの自然描写が鮮やかに描かれ、そこでのアレン警部と容疑者との話し合いも印象的。2016/04/17
紅はこべ
21
黄金時代の女性作家の中では地味な印象のマーシュ。ロデリック・アレン警部の印象が薄いせいか。本作アレンがマーシュの故郷ニュージーランドを旅行中に、旅公演中の英国の劇団と知り合うという設定。故郷が舞台だけあって、自然描写には力が入っている。殺人シーンはかなり残酷。マーシュが得意とする演劇と役者を素材に、奇手奇想は用いず、人の隙や盲点を突いた殺人の真相を、アリバイや劇場の見取図を丹念に検証することによって暴いた、手際良くまとめられた佳品。まさにヴィンテージの味わい。2009/12/26
翠埜もぐら
11
ナイオ・マーシュは二冊目なのでまだ傾向がわからないのですが、「穏やか」な殺人事件と言う感じでした。凄惨な殺人現場の描写がとても少なく立ち回りもなく、これってナイオ・マーシュの特徴なのかしら。登場人物の数が多くそんなに強い個性があるわけでもないのに、私にしてはなぜかしっかり区別がつきました。その分現場の劇場の構成がよくわからなかったなあ。オーソドックスでセオリー通りなのかもしれませんが十分楽しめました。最近疲れない小説が好きなのよ。エピローグ、ほっこりにっこりでした。2021/05/14
UPMR
2
今のところ読んだマーシュの作品の中ではいちばんよくできている。『殺人鬼登場』のネタバレが思い切りされている点は注意が必要だが、またも劇場が舞台となっているところは作者の面目躍如だし、奇抜な殺人方法もインパクト抜群。休暇中というアレン警部の特異な立場や、ニュージーランドの風物、マオリの人々の文化などが物語に色を添えているのも良い。何より小技の効いたトリックに感心する。アレン警部による犯行再現が鮮やか。ただ、犯人や動機の意外性に特にひねりがないというフーダニットとしての物足りなさは否めないかな。2023/08/11
timeturner
2
マーシュはニュージーランド人で、演劇畑出身なのだそうで、なるほど、アクの強い劇団員たちを美しいニュージーランドの自然の中に配したこの作品は、書きたくて書いたという楽しさが感じられる。2013/04/21