出版社内容情報
冴えない中年医師と天真爛漫な姪が織りなす、ささやかで確かな人生讃歌。『太陽の季節』と芥川賞を競い敗れた無冠の傑作が再び輝く!
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- 評価
本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
内島菫
10
本書を読むと文学とは何かと思う。細やかなこと、何でもないこと、秘めた屈託、劣等感、風穴、人間の機微、矛盾・・・・。様々に自由自在に表現できるはずの体裁が、かえってしがらみを、作者の自覚の有無にかかわらず露呈してしまうもの・・・・。とは言え、文学の要諦とは味わいと雰囲気ではないだろうか。この形なく目に見えず、捉え得たとしてもすぐに消えかねないものを弱いままでどこまで信じ得るかが文学を支えるものではないだろうか。その弱きものが行間として本書に感じられた。2024/09/02
たけのこ
1
藤枝静男先生の原作を川勝徳重先生がコミカライズ。面白かったです。ふきだしの形とか独特だし、絵柄が急に変わったり、古風で自由な印象がありつつも、いまっぽい新しいというか洗練された技術もこらされてて読み応えありました。2024/09/11
緑虫@漫画
0
★★★☆2024/09/08
裏竹秋
0
藤枝静夫の芥川賞候補作「痩我慢の説」の漫画化(その時の受賞は、石原慎太郎の「太陽の季節」)。多分にこの漫画家の作家性が出て、藤枝静夫の幻想性がまざった独特の味になった。脚色は効果を挙げてゐると感じた。第一に、ホナミといふ姪が天真爛漫、魅力的で、印象が際立つ。加へて、藤枝とおぼしい人物とその妻の偏屈さが、これからの時代性を示唆して悪くない。あとがきで、作者が藤枝の作品を紹介してゐる。そのなかに大江健三郎の『取り替え子』のはなしが出てきて、私は好感をいだいた。次作が気になった。2024/08/31