内容説明
バイオレンス・ホラーの知られざる原点!百年の封印を解かれて現代によみがえる史上最恐の四谷怪談小説。他に単行本未収録の怪談実話集や怪談演劇論を併録。
目次
お岩
怪談演劇論集(『雷火』;『怪談小車草紙』;『東海道四谷怪談』;鶴屋南北とヴェデキント;ド・ベンヌウィルの『四谷怪談』に就て;西洋の幽霊芝居)
怪談実話集(女の膝;因果;今戸狐;番町の怪と高輪の怪と)
著者等紹介
小山内薫[オサナイカオル]
1881年、軍医だった父の赴任先である広島市に生まれ東京で育つ。演出家、劇作家、批評家、小説家。東大英文科卒。在学中から森鴎外の知遇を得て、翻訳や創作、舞台演出などを手がける。1909年、市川左団次と自由劇場を結成。24年には土方与志と築地小劇場を創設。近代演劇の確立に尽力し「新劇の父」と称された。自伝的長篇『大川端』ほかの小説や戯曲、評論、翻訳、童話など多彩な著作を遺した。1928年に急逝
東雅夫[ヒガシマサオ]
1958年、神奈川県横須賀市に生まれる。アンソロジスト、文芸評論家。怪談専門誌『幽』編集長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
リッツ
22
有名な四ッ谷怪談は昔映画や漫画で観たし、京極作品の伊右衛門は、美しく驚かされたし、これは原作?と借りてみましたら出だしから、え?え?え?の連続。かなり違う、私の聞いてた話と。登場人物も多ければ、酷い人、情のない人の多いこと!そしてもれなく復讐されるので、とても長い念のいった物語で、怖いけど止まらない。祟りだけでなく法のもとに裁かれる者もいて、それは当然のことながら最後まで固まりそうに怖かった。同時収録は、実話だったのでビビって今は開けませんでした。2016/08/20
佐倉
6
四谷怪談の物語を近代の世界観…心霊主義や心理学的なものも含めて…に翻案しているような作品に思えた。それというのも大正年間に小山内薫氏によって描かれた四谷怪談の翻案だが、さらに原本としてアメリカ人作家ベンネヴィルが四谷雑談集や講談を元に書いたものをいわば逆輸入する形で翻案したものだかららしい。この作品においてお岩が化けて出てくるシーンは怨霊が現れるのではなく、怨霊の存在を恐れるものの心理の反映として描かれる。ひとつの時代の四谷怪談観として面白く読めた。2022/07/09
ZEPPELIN
4
お岩さん、顔だけじゃなく性格にも難があるのかと思いきや、バカ野郎なのはその他大勢だった。中盤から始まる復讐が凄すぎて、怪談なのにワクワクしてしまう。自刃できればまだマシな死に方で、死体が歩き出すところなんてもはやコメディー。鶴屋南北の四谷怪談と一部が違うらしいけれど、これはこれで充分に楽しめた。表紙が黒、ページの外枠も黒で、怪談の雰囲気を盛り上げているし、2ページごとに細かく区切って読みやすくしている点もいい。皿屋敷と牡丹灯籠もないかなぁ2014/05/09
S‐tora
2
◎ お岩さん以外登場人物が皆クズなのが凄い。 結局怖いのは人間の業ということで。2016/04/28
深川拓
1
人口に膾炙した『四谷怪談』と異なるのは成立背景に拠るようだが、もとが新聞連載であったために起伏が大きく、終始凄味がつきまとうので、古い小説にも拘わらず牽引力が著しい。出来事は壮絶だが、現代の実話怪談に近い距離感のある描写が、本邦怪談のウエットさとうまく調和して、ほどよくもずしんとした衝撃を齎す。むしろ現代だからこそ読まれて然るべき“怪談小説”かも知れません。2011/08/25