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出版社内容情報
よみがえる幻の名作――ヨーロッパとアジアにまたがる「植民地批判」文学の古典。19世紀、オランダ領東インド(現在のインドネシア)における植民地支配の過酷な実態を内部告発し、当時ヨーロッパ各国に大センセーションを巻き起こした作品です。母国オランダでは「国民文学」として読み継がれ、ヨーロッパでは知らぬ人のない古典中の古典。日本ではアジア近現代史研究の中でしょっちゅう名前が出てくる本ですが、戦前に出た翻訳を目にしたものはほとんどないという「幻の」作品。
オランダ語で書かれた文学ですが、植民地を通じてヨーロッパとアジアにまたがる世界的名著と言えるでしょう。
著者ムルタトゥーリが小説の形を借りて19世紀のオランダ領東インド植民地における植民地支配の実態を内部告発し、植民地政策を痛烈に批判した異色の作品である。小説とはいえ全くのフィクションではなく、その内容は大筋では史実に合致している。そのため出版にあたっては当初から政治的な思惑に巻き込まれ、結局著者の意図したものとは少し違った形で、つまり利害関係者が特定しにくいような形で世に出た。しかし関係者の間ではたちまちセンセーションを引き起こし、やがては19世紀最大の問題作として評価を得て、読み継がれていった。今では近代オランダ文学の最高傑作として、押しも押されぬ地位を確立している。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
belier
3
インドネシアにおけるオランダ植民地支配の実態を作者の体験を元に暴露した小説。当時のオランダでは政策が変るほど相当インパクトがあったようだ。そうした事情を詳しく教えてくれた解説が秀逸。小説としては後半に作者の怒りが炸裂して迫力がある。えてしてそうした作者の主張は作品を台無しにしがちだが、この小説では逆に力となっている。また小説内のジャワ人の若者の物語が泣かせる。この物語で作者がただの私憤で書いたのではないことが分かる。現代の開発独裁国家の暴虐を見逃す先進国の事なかれ主義は、当時とさほど変ってない気がする。2015/12/06
Masaya
0
オランダ植民地下のインドネシアで行われていた非情な植民地政策についての暴露本。なぜ「暴露本」なのかというと、著者がオランダからインドネシアへ実際に植民地と位置へ行った人だからです。植民地政策に苦しむインドネシアの人々やオランダによる統治の実態、植民地からの搾取により利益を上げ豊かな生活を送るオランダ本国の人々と当時の植民地統治や本国とのつながりなどがよくわかる本です。この本は登場人物の実名を伏せて小説という形で出版されている。当時のオランダの人々にとってこの本の内容は衝撃的だったと思います。2010/11/08