内容説明
イギリスの書評の魅力を語り、日本の書評文化を一望する。漱石・荷風・佐藤春夫から池澤夏樹・江國香織まで、源氏物語から大正天皇の歌集まで、そして、バルザックからナボコフとクンデラまで、さらには日本国語大辞典からマリリン・モンローと『ユリシーズ』の関係まで、読書共同体のための花やかで役に立つ読物がたつぷり。読書共同体のための本の評判記にして書物の買物案内。
目次
1 書評のある人生(「今週の本棚」の十一年;書評と「週刊朝日」 ほか)
2 書評78選(雨風嵐の男;生れながらの小説家 ほか)
3 推薦文そして後始末(鹿の歌;せつない話 ほか)
4 カリブ海からカール・マルクスまで(百首余談;鷺坂伴内のために ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
16
毎日新聞の書評を担当なさっているようだが、あえて辞書を取り上げている箇所があって、三浦しをんさんの「舟を編む」を思い出し、嬉しくなった。新聞書評では辞書は普通採用しないようです。そういうルールは壊してくださったほうが、読者としても面白いですよね。2012/02/16
テイネハイランド
13
図書館本。大和書房「遊び時間(1-3)」以来、丸谷さんの書評集は長年愛読してきましたが、本書(1999-2006初掲載の文を収録)も同形式で書かれており読んでいて懐かしさを覚えました。丸谷さんの書評は、取り上げられている本がバラエティーに富み、文章がわかりやすくかつ趣向に富んでいるのが素晴らしい。この本では、二人の同業者(向井敏・瀬戸川猛資)への追悼の文が印象に残ります。丸谷さん本人も含めて、この三人の新作の書評/評論がもはや読めないのは、実生活で尊敬する友人を亡くすのにも似た寂しさを覚えます。 2016/08/17
ナナ
3
「この本はじつに面白い、ぜひお読みなさい、っていう気迫で迫ってくるのが、書評としていちばんいい、とぼくは思う。」(p.20)の言葉通りに興味をかき立てられる丸谷先生の書評の数々。対象はミステリ古典詩歌辞書まで自在。書評論ともいうべき第一章では、書評の持つ紹介・評価・批評・知識の共有etc.の機能についての日英比較もあり興味深い。本文の後に“解説”を載せる日本、巻頭に序文を掲げるイギリス。面白いレビューはまさに手紙のように訴えかけてくるし何度も読みたくなるものだと、丸谷氏の序文を読み返して思いました。2015/03/11
じろう
2
大正天皇が優れた歌人という評価や折口信夫の恋人が有名な僧であったり。2021/06/12