内容説明
舞台は一九二四年、オックスフォード大学。勉強熱心で真面目なチャールスは美しく奔放な青年貴族セバスチャンと出会い、その魅力にひきつけられていった。二人の間にはすぐに友情が生まれ、チャールスはセバスチャンの家族が住むブライヅヘッドの城を訪ね、その華やかな世界の抗しがたい魔力にとらわれてゆく。一方、セバスチャンは酒浸りの乱れた生活に溺れてゆき、やがて倒錯した愛に溺れはじめる…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
13
若気至りによる恋、野望、今まで暮らしていた世界との違和感に気づき、自ら選んだ道を進むため、信仰から離れるが結局は時代の流れの速さや世俗の浅ましさに傷ついて帰ってしまう兄妹たち。己の幸せだと思っていたことが本当の幸せでないと気づき、自分の幸せは自分が一度は捨てた、信じてきたことに成り立っていたという逆説の証明が離婚、死別、老いによって写し出される。「本当の聖人や神様を憎むことなんてできないから聖人のようで聖人じゃない母さんを憎んでいた」というコーデリアの言葉は人間の大いなるものへの圧倒的なひ弱さを指す。2012/05/16
madhatter
6
再読。第一の感想が「やっぱこれは吉田健一じゃないと!」。それはともかく、あまりにも美しい滅びの物語。それは個人的な恋愛や友情、青春であったり、より大局的なある一つの時代であったりする。確かに、自分の中で何かが滅びる感覚に、時代の変化を重ねるのは、作中の時代に限定されない普遍的な感情であろう。だが、それを崇高なレベルにまで高めて表現したことに、この作品の意義はある。宗教という日本人には理解し辛い要素もあるが、それを自分なりに処理する努力さえ放棄させる程、難解な作品ではない。2010/06/05
timeturner
2
後半は宗教(カトリック)に関する真面目な話が多いので、無宗教の私には正直言って「へえ」としか思えなかったが、前半のオックスフォードでの青春時代は夢のよう。2010/03/13
ひらく
2
信仰に抗っても、目を逸らしても、背を向けてもいずれは絡めとられてしまう…。自分の奥底にある深い深い沼のような泉のような…そこへ向かうことを避けようがないもの。それなしでは自らの幸いを成り立たせることのできないもの。かたちないものに人生を捧げる彼らは哀しくもあり美しくもあり、主人公からすれば虚しくも映るのだろうな。時代の変化の中にあった、一つの家族の滅びの物語。2011/08/20
Hiroyuki
1
イヴリン・ウォーの小説は皮肉のきいた一種のコメディ作品が大半だけれども、これだけ(全部読んだわけじゃないからこれ「だけ」かはホントは知らないのだけれども、多分これだけじゃないかな)は別。一種の信仰告白だといっても過言ではないだろう。色々版も出ているようだけれども、吉田健一訳のこの版がおすすめ。2016/06/25
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