内容説明
「世界が現象する」とはどういうことなのか。フッサールの問題系に気鋭の哲学者が挑む。驚きに満ちた「現象学」解説の、そしてフッサール解体の試み。
目次
第1章 たび重なる「転回」―数学から超越論哲学へ
第2章 事象そのものへ―「現象」への還元
第3章 記号と意味―「現象」の内実
第4章 身体と私―「現象」の媒体
第5章 世界―「現象」の場所
第6章 時間と他なるもの―「現象」の外部へ
著者等紹介
斎藤慶典[サイトウヨシミチ]
1957年、横浜生まれ。慶応義塾大学文学部を卒業後、同大学大学院文学研究科博士課程終了。哲学博士。現在、慶応義塾大学文学部哲学科教授。専攻は、現象学、西洋近・現代哲学
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感想・レビュー
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またの名
13
「だって、こんなにも頭が悪く鈍重な人が、ニ十世紀を代表する哲学潮流のひとつである現象学の創始者であるというのだから、なんだか勇気が出てくる話ではないか」というのはもちろん好意から出た言葉。アイデアは面白いが突き抜けないフッサール哲学の乗り越えを多くの優れた現象学徒と同じくフッサール哲学を用いて、しかもフッサールの解説として実践。先入観を含む一切の判断を停止したのちに自我や現象が見出せる地点で、師の先を進んでさらにそれらを現象せしめる規定し得ない何ものかに迫る。結論に仏教的な感触があるけどそれはそれで良い。2016/12/09
hakootoko
5
『これが現象学だ』と構成は変わらないけど、フッサールを批判してみている。思ったのは読んだことないけど差延的な?とか思った。先に挙げた谷徹に比べて冗長的なので考えながら読むのに良いです。2021/07/02
グスタフ
5
斉藤氏は、フッサール師の思考を徹底することで、ついにはそれが成り立たなくなる地点にまでその思考を追い詰め、独自な境地を切り開くことを目指す。たぶん、ハイデガー、メルトポンティ、サルトルなども、その道を歩んだ人たちなのだろう。この本は、その師を、無味乾燥、鈍重、頭が悪い等々、これでもかというほど非難するところから書き始められる。フッサールは、この師なら易々と乗り越えられると、誤解させ、その気にさせる天才だったのかもしれない。フッサールは哲学史上ソクラテスと並ぶほどの優れた師だったのではないか。2012/10/13
ch
2
フッサール入門書ではあるが、フッサールの基本概念ではない「想像力」等を掘りさげて、「現象すること」の内実に迫り、フッサールの現象学とは違う立場に立つ。にもかかわらず、現象学の問題圏や核となるものが明確になり、入門書として成功しているように思える。ノエマーノエシスに対応した、「ありあり感」を表すものとしてのリアリティーアクチュアリティという述語はおもしろい(これは筆者ではなく木村敏氏の提唱によるらしいが)。そしてこれは、後期フッサールの重要概念である「顕在性」、「潜在性」あるいは「地平」へと繋がっている。2012/02/29
想像上の集合
1
非常に面白い。特に「不在に於ける現前化」する能力である想像力を用いてノエマに迫るロジックは素晴らしく、自分の中で長年纏まらなかった思索が綺麗に繋がって明晰に為った。2012/06/06
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