感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
112
森永乳業のひ素混入粉ミルクを飲んだために障碍を負ったはせがわくん。本作は彼を仲間に入れてあらゆる局面で足を引っ張られる友人視点で彼を描く。おばちゃんに説明された背景を「ようわからへん」とはねつけた「ぼく」は「しんどい」「頭にくる」「きらいや」とぼやきながら目の前のはせがわくんから直に何かを汲み取ろうともがくのだった。いらだちを体現した力強い文字のタッチが生々しい。当時を「よわみそ」と振り返る作者視点も重なり、見る痛みと見られる痛みが複層化するから尚更。結果、歴史物よりも哲学的な色合いの処女作に仕上がった。2024/03/30
紫綺
100
モノクロで、筆とクレヨンタッチの線が味わい深い。絵柄と大阪弁がマッチして面白い。でも、中身は鋭く社会風刺している。はせがわくんをきらいなんやけど、だいすきなんやなあ、きっと・・・。2015/02/28
おくちゃん🌷柳緑花紅
94
半世紀以上前にあった森永ヒ素ミルクを飲んだ赤ちゃん、その赤ちゃんの一人だった長谷川集平さんが書いています。モノクロの文字と絵、兵庫弁。おばちゃんのゆうこと、ようわからへんわ。なんでそんなミルク飲ませたんや。おばちゃんのゆうことわからへん。大嫌いでほんとは好きなんだね。でもやっぱり嫌いなんだね。こんなことがあったとこ、覚えておかなくては‼2015/10/27
美登利
87
私が借りた本は1984年発行のですが、画像が無いのでこちらで登録します。読友さんの感想からこの本を知りました。事件のことは若い頃に知ってたけど、この本の存在は知らなかったです。長谷川さんは、ご自分も同じ砒素ミルクの被害にあい、もっと体の状態が悪かった友達を思い出して描いたんですね。このような事件を起こすに至った背景が有ったことを思い、二度と繰り返さない為にも忘れてはいけないですね。子供の目線で描いた差別、困惑、よくわからないものへの不安に溢れています。この方言だからこそ、切ない感じがよけいにあります。2016/05/08
chimako
77
泣き虫で野球もヘタで歯もガタガタやし目はどこ向いてるかわからない、長谷川くん。おばちゃんに聞いたら「赤ちゃんの時ヒ素という毒のはいったミルク飲んだの。それから、体こわしてしもたのよ。」とおしえてくれた。でも、おばちゃんの言うことようわからへん。長谷川くん、きらいや……そう言いながら「もっと早うに走ってみいな。」「泣かんときいな。」「わろうてみいな。」「ごはん、ぎょうさん食べようか。」「だいじょうぶか。長谷川くん。」……長谷川くんきっと大好きなんやね。読みながら泣いてしまう。あとがきもぜひ。2015/05/13