感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
(C17H26O4)
82
アルゼンチンの作家の短編集。ユーモアの中にどことなくペーソス。思いがけない結末が待っているとぼけた味わいのある10編のお話。ナンセンスっぽくも読めたりもするし、中に大切なことがこっそり仕込まれているように読めたりもする。とっても面白かった。語り手はぼく。どれもどこか妙なお話なのだけど巧みな語りのためだろう、作者に起きた本当の出来事の思い出話に思えてくる。訳者あとがきによると原書には「十個のでっちあげた思い出」という副題がついているんだって。暗清色の渋い色味で描かれた絵もなんといえない不思議な魅力がある。2022/10/24
空猫
37
10の短編。ほっこりする話、甘酸っぱい話、少し不思議な話、もの哀しい話…バラエティに富み、挿し絵もおしゃれだが、YA向けなので、大人なおいらには少し物足りない(((  ̄- ̄)2021/10/22
Roko
30
この本の中に登場する「ものすごく貧乏というわけじゃないけど、2間しかないアパートに4人で暮らしていた」というような感覚が、わたしの子ども時代の感覚にとっても近いんです。みんなそんなに豊ってわけじゃないけど、それなりに楽しく生きていた時代の記憶が呼び覚まされるような気がします。何だろう?この感覚は、地球の裏側の見たこともない町の話なのに、とても懐かしく感じてしまうのです。2021/04/25
くさてる
28
アルゼンチンの作家による短編集。ちょっと不思議だったり、幼いころの思い出だったり、派手なものではないですが、そのぶん読み心地が落ち着いていて、良かった。好きなのはラストがとにかく良い「見知らぬ友」とエピソード丸ごとが子供時代の情熱という気になった「ムコンボ」と老女から失敬した一枚の写真の正体が印象的な「クラス一の美少女」。2022/09/14
かもめ通信
25
アルゼンチンの児童文学作家による短篇集。YA小説だが若い世代だけに独占させておくのはもったいない読み応えのある作品群だ。ちょっと困った人々を優しく包み込むような視線と、行間からにじみ出るユーモアが、決して明るい題材ばかりではないにもかかわらず、読み手の心をじんわり温めてくれる。とりわけお気に入りは、ピンチになるとあらわれる「見知らぬ友」、観賞魚が仲立ちする淡い想い「ヴェネツィア」、作家の子ども時代を思わせる「地球のかたわれ」あたり。本書のトリをつとめる「クラス一の美少女」も忘れがたい。 2021/02/24