出版社内容情報
はるか二千数百年前より、日本人は稲作を続けてきた。稲と日本人は、生死を共に生き抜いた、かけがえのない仲間同士である。
著者等紹介
甲斐信枝[カイノブエ]
1930年、広島県に生まれる。故清水良雄氏(光風会会員、童話雑誌「赤い鳥」の画家)に師事。絵本に『雑草のくらし―あき地の五年間』(第八回絵本にっぽん賞。第十七回講談社出版文化賞。)などがある
佐藤洋一郎[サトウヨウイチロウ]
1952年和歌山県に生まれる。専門は植物遺伝学。農学博士。現在、人間文化研究機構理事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Aya Murakami
79
図書館本。 稲と日本人が時空を超えた苦難の旅をする話。やはり中国か朝鮮半島から日本に渡って来たのでしょうね。下戸遺伝子とともに。 絵本としては結構字が多い方の作品とおもわれます。 稲の花がパカーンと割れて開花する(別のお米絵本ではその期間2時間)様子は生命の神秘を感じさせます。それにしても飢饉はイヤだなぁ。最近は食糧危機の話があちこちで持ち上がっていますし。ジーンバンクもいいですが農家さんや私たち家庭菜園家・ガーデナーの踏ん張りどころでしょう。2024/04/20
けんとまん1007
47
いうも思うが、よく、これだけの絵を描けるものだと。その根っこにあるのが、観察するということ。稲、特に水稲はこの国だけでなく、世界にとっても重要な意味を持っている。そこにでてくるのは、収量という2文字。その次にくるのが、味わい。そして、安全性。実際、今はやっていないが数年前まで、米つくりも少しだけやっていたので、その厳しさもわかる。これから、どんな変化が待っているのだろと思った。2017/04/10
FOTD
25
稲作伝来の話から、天明の大飢饉、天明三年の浅間山の大噴火、など物語に引き込まれて、あっという間に読み終わった。西日本の享保の大飢饉はウンカの大量発生が原因だったとか、水を貯める大きな池を作った話、隣の村へ水を送るトンネルを作った話、など知らないことばかりだった。前半が稲作の歴史だとすると、後半は品種改良や技術開発の話。日本人と稲作は切っても切れない関係だ。今後、米の消費量が増えるのか減るのかわからないが、子供から大人まですべてのひとに読んでいただきたいなぁと思った。2020/01/22
itokake
21
日本語の「ごはん」が好き。朝ごはん、昼ごはん、夜ごはんの言葉をイギリス人に説明した時、「日本人はいつもごはんを食べるのね」と驚かれた。英語ではそれぞれ別単語だ。本書は著者が十数年に渡り取材を重ね、まとめ上げた作品。絵本というより、作品と呼びたい。ページをめくるたび、水田という仕組みを知った弥生時代の日本人の驚きを追体験し、米の不作による飢饉の苦しみを想像し、旅先から珍しい強い米を竹筒に入れて持ち帰り品種改良に励んだ人々に共感する。4000種の米が、戦後はわずか10種に。先人の知恵は、お米バンクに眠る。2022/12/09
遠い日
18
十年の時間をかけて取材し、絵を工夫し書き上げた甲斐信枝さんの力作。千年を越える時をかけて培われてきた稲作の技術と日本人の歴史。稲作文化が日本の農耕を変えていった理由と、それにかける熱い思いが窺われる。豊かな実りを得るために重ねた苦労や、飢饉との戦い。さまざまな障害を乗り越えてきた農民たちの執念に胸を突かれる。稲の原種の「野生稲」からの気の遠くなるような改良の歴史は、飢えへの畏れと安定した収穫への憧れの歴史と重なる。また田に引く水を巡る攻防も、厳しい稲作の状況を裏付けるものだ。稲の歴史は深い。2016/06/22