内容説明
夏休み。小学5年生の美乃里(みのり)は、同じく5年生で同じ名前の男の子、実(みのり)と出会い、一緒に「木島の湯」という町の銭湯で、お風呂掃除の手伝いをすることになった。頑固な木島のおじいさんや実のおばあさんとの交流、やがてやってくる実との突然の別れを通して、少女の心の成長を描く。小学校上級以上。
著者等紹介
藤巻吏絵[フジマキリエ]
1972年、東京都に生まれる。実践女子大学文学部卒業。『唐棣(はねず)色の明日』で第11回銀の雫文芸賞最優秀賞受賞
長新太[チョウシンタ]
1927年、東京都に生まれる。漫画家、絵本作家。2005年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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森の三時
33
子どもの頃は誕生日に1つ歳を取るのとは別にひと夏に1つ大人になり、子どものときの良き体験や思い出は大人になってもその人を陰で支えてくれるのではないかと思っているのですが、まさに体現するような良書でした。主人公は、小学5年生の女の子。好きな男の子は親友とお似合いなのではないかと感じ、背が高いことなど容姿にコンプレックスがあったり、何となく自分を好きになれない。そんな彼女が同じ名前の男の子との出会いや銭湯の頑固じいさんとの交流を通じて成長していく物語。会いたいとずっと胸の中にいる人に恥ずかしくない私でいよう。2024/07/10
長くつしたのピッピ
12
小学校5年生のみのりは、幼馴染の茜ちゃんと同級生の須賀君との三角関係に悩んでいる。そこへ突然現れた同名の実。背が高いことへのコンプレックスを「自分ことを嫌いなったら駄目だよ」と言って励ます実。ふたりの夏休みがお風呂屋さんのお掃除や気難しい木島さんとの交流を通して輝いていく。小学高学年にぴったりのストーリー展開にすてきな本に出会わずに大人になっていく子どもたちがもったいない。本を読む習慣は、一長一短では難しいけれども、子どもの本に大人になってから出会う喜びを是非知ってほしい。2020/04/14
ひろんこ
5
凄くいいお話だった同じ名前の美乃里と実。そして銭湯のおじいさんの木島さんのひと夏の思い出。木島さんは一見、頑固ジジイでも本音は、凄く優しくて暖かい人。今でいうツンデレな人。実くんとの別れも木島さんとの別れも辛くて涙。最後、見つけてくれるかもわからないけど実くんに宛てた美乃里のお手紙に、また涙。本当にいい話。ほんわか+感動2023/07/30
遠山葉月
1
この物語は子どもが大人顔負けの活躍をする物語ではない。大人の事情の前に子どもたちはどこまでも無力だ。だがその無力さが子どもたちを成長させたように思う。切ないが力強い物語。泣けた。2018/01/07
てぃうり
1
5年生の美乃里ちゃんと実くん。木島の湯の木島さんとの交流が温かい。『夏の庭』を彷彿とさせる。12年後の美乃里の手紙を、どうか実くんが読みますように。2015/09/23