内容説明
個性豊かな犬たち、戦場に迷いこんだ仔ジカ、伝説のオオライチョウ、ミツバチの不思議、働き者の老いたロバ…。森の語り部がつむぐ、動物たちと人びとの、共生の物語。
目次
マルテ、愛を秘めた自由な犬
ちびのトゥルカ
雪の犬たち
アルバとフランコ
五月のノロジカ
春の雷雨
戦場のノロジカ
ともに暮らす季節
森への攻撃
アカゲラ、シロフクロウ、ヨーロッパカヤクグリ
カラスたち
キバシオオライチョウ、クロライチョウ、ライチョウ
イワシャコたち
愛しいクロウタドリ
フクロウの時間
雪の上の跡
ヤマネたち
リス、イタチ、ノウサギ
ロバのジョルジャの友だち訪問
著者等紹介
ステルン,マーリオ・リゴーニ[ステルン,マーリオリゴーニ][Stern,Mario Rigoni]
1921年、アルプス山麓の町アジアーゴに生まれる。現代イタリア文学を代表する作家。第二次大戦時、兵士としてヨーロッパの戦場を、のちには捕虜としてナチスの強制収容所を体験。ロシア戦線からの悲惨な退却行を記した第一作『雪の中の軍曹』(大久保昭男訳・草思社)は、「第二次大戦の戦場を描いた最もすぐれた文学のひとつ」との評価が高い。戦後は故郷にとどまったまま、歴史・野生・庶民をテーマに多くの秀作を発表
志村啓子[シムラケイコ]
1947年、神奈川県二宮に生まれる。東京外国語大学イタリア語学科卒業。もと都立高校教員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぱせり
15
残酷な時代を生き延びた作者と動物たちの内面にある暗い森。その共感の音を聞いている気分だ。しかし、人間というものはつくづく破壊することが得意な生き物だ。森は闇を内包して静謐なまでに美しい。軽はずみな善意から森の闇を遠ざけ、忘れてしまうことが恐ろしい。忘れたものの代わりに忍び込んでくるもっともっと深い闇が恐ろしい。そんなことを考えています。2014/01/06
timeturner
5
北イタリアの森の中の家で暮らす作者がエッセイのように物語る動物と人間の共生、そして戦争の記憶。感動的なエピソードをこれみよがしに盛り上げることなく語り、戦争や自然破壊といった人間の失敗を静かに、だが容赦なく糾弾する。2022/07/19
ma_non_troppo
3
北イタリアのアルプス山麓で暮らす動物たちについての物語が19編収められている。どれもささやかながら、自然をきちんと観察している人にしか書くことのできない希少なものだ。文章は自然そのもののように実直で、飾り気がなく、そしてやさしい。イタリア人である作家はまだ十代で第二次大戦に駆り出され、数々のヨーロッパ戦線を経て、23歳のときナチスの捕虜となりオーストリアの強制収容所を体験した。そこから脱走し、一ヶ月かけてアルプスを徒歩で越え、故郷へと帰った。2010/12/24
misui
1
最後のほうは眠い時に読んだのでもったいなかった。骨太な語り口が素晴らしい。2011/01/20
たい
1
『雷鳥の森』と同じような調子で、動物の生態や、人間と動物の交流を描写している。ところどころで姿を見せる戦争の記憶は、すでに過去のものになっているような印象を受けた。環境破壊に話が及ぶと文章の調子が乱れるのも印象的だった。2010/12/26