内容説明
美容院で髪をセットしてもらいながら、カミーユははじめて人生を満喫していた。二十五歳の天才原子物理学者である彼女は、これまでずっとイースターウッドエネルギー研究所のなかで過ごしてきた。流行の服も、化粧も、最新の映画も、旅行も知らずに…。が、歯医者でふと女性雑誌を手にしたのがきっかけで、研究所の外に大きな世界が開けていることを知った。そして今、とうとう研究所を抜けだし、自由を手に入れたのだ。大変身して美容院を出たカミーユは、さっき銀行で自分をじっと見ていた男がまだいるのに気づいた。いい考えが浮かび、男に正面からぶつかっていく。そして言った。「わたしのあとを一日中つけていたでしょう」。