内容説明
霧深い渓谷を見下ろすフィールディング・カレッジの一室で、先ほどからリリー・バーンズは、不安に襲われていた。英文科の教授として着任した最初の日だというのに、同僚の教授たちは、誰ひとり挨拶の言葉さえかけようとしない。教員控え室に集まっているのは、なぜか全員男性。彼らはひそひそ話を交わしては、こっそりリリーを見るばかりだ。雰囲気を和らげようとリリーが冗談を言うと、教授たちはいっせいに、まるで銃を突きつけられたような表情を浮かべた。大会社を経営する両親から独立するためにこの町に来たリリーだが、今は、一刻も早くここをとび出して、両親のもとへ帰ってしまいたい気持になっていた。やがて現れた学科主任のアレック・トーマスも、不可解にも敵意と侮蔑のこもった言葉を投げつけてくる。いったい、このカレッジでは何が起こっているのかしら。



