内容説明
言うまでもなく、フランシス・ベイコンはこれまで、デカルトと並ぶヨーロッパ近代哲学の創始者として称賛と非難をともに浴びてきた。しかし、本書では、何よりもまず、ベイコンを彼が生きた歴史の舞台に呼び戻すことを目指す。すなわち、本書の目的は、彼を「近代」の「哲学者」として偶像化するのではなく、ルネサンス期のイングランドの「顧問官」として歴史内在的に理解することにある。そのうえで彼のテクストを改めて読み直せば、ともすれば「近代」の「市民革命」に至る前史として単線的に理解されがちなルネサンス期において、むしろ逆に、豊かな人文主義的教養と人間の作為によって「内乱」を回避することを試みた一人の「助言者」の物語が浮かび上がるのではないか。この物語はまた、政治学の可能性を指し示す一つの歴史的事例として読むことも出来よう。
目次
序章 フランシス・ベイコンとルネサンス期イングランド
第1章 ルネサンス期イングランドにおける「活動的生活」論
第2章 「顧問官」の政治学
第3章 「顧問官」ベイコンと「ブリテン」一六〇三―一六〇七
第4章 「顧問官」ベイコンと「法律家」一六〇三―一六一六
第5章 「顧問官」ベイコンと「宮廷」一六〇三―一六二一
終章 「顧問官」ベイコンのユートピア?一六二一―一六二六
著者等紹介
木村俊道[キムラトシミチ]
1970年埼玉県に生まれる。1992年東京都立大学法学部卒業。1998年同大学大学院社会科学研究科博士課程退学。1998‐2000年同大学法学部助手。現在、九州大学大学院法学研究院助教授、博士(政治学)
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