内容説明
弱肉強食の論理を助長する新自由主義に対して、いかなるオルタナティブが可能なのか。明治日本の宗教界にあった「侠気」の現代的意味を探り、天理教の事例に「暴力をやわらげる方法」の手がかりを見出すなど、「民衆」宗教と社会の関係をときほぐす。
目次
第1章 小説『1Q84』における悪の表象について
第2章 明治日本の宗教者とエートスとしての“侠気”
第3章 天理教教祖と“暴力”の問題系
第4章 天理教教祖は強い父の夢を見たか?―日本の宗教界と宗教学の共犯関係
第5章 天理教の男性カリスマの研究―関根豊松の事例
第6章 日本の宗教における信仰治療について―天理教の事例から
第7章 不安障害の信仰治療について―天理教の事例から
第8章 日本の宗教と「斜めの関係」―天理教と脱ひきこもり
著者等紹介
熊田一雄[クマタカズオ]
1962年京都市生まれ。東京大学大学院文化人類学専攻博士課程単位取得退学。現在、愛知学院大学文学部宗教文化学科教員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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田中峰和
5
第1章でこそ、小説「1Q84」における宗教の問題を取り上げて、オウム真理教の問題点と悪の表象について論じて学術てきだった。ところが、第3章以降は天理教の理念や奇跡を教団からのメッセージをそのまま宣伝内容にはうんざりした。安倍元首相の暗殺事件以来、統一教会による搾取の問題が連日、報道されている。本来、新宗教とは信者から搾取するのが当たり前の存在。天理教などは搾取の宗教と糾弾されていた時期もあった。病気直しや詐欺的行為で信者を増やしてきた天理教だが、本書で紹介されている子ども食堂などの良い面もあるにはある。2022/09/29
noko
3
天理教のことが中心の本で、新宗教全般の事を知りたい人が読んで満足いく本ではない。ほんの少しだけオウム真理教について取り上げられていた。オウムの中核には聖無頓着の問題があり、現代日本の若年高学歴層における人間関係の希薄化の問題がある。他者との共感共苦をやめ心を安定させようという教えを、オウムは主張。原始仏教の精髄と松本は言うが、本来の原始仏教の教えとは何も関係がない。6歳で親に捨てられた松本が、自己救済のために編み出した心のコントロール法が元になっている。2024/09/26




