出版社内容情報
東京の帝大に進学した主人公・宮城の心は様々な宗教者が戦わす法論に接しながら揺れ動く。宗門改革運動にも引かれたものの、心を満足させてくれる宗教者には出会えず――。
痛烈な教団批判と煩悶青年の葛藤を息づまる迫力で描く、松岡譲の代表作にして自伝的小説、待望の復刊。
解説=真継伸彦、大澤絢子
★法蔵館文庫創刊5周年記念
DMM GAMES「文豪とアルケミスト」とのタイアップコラボ帯を特装!((c)2016 EXNOA LLC)
内容説明
東京の帝大に進学した主人公・宮城の心は様々な宗教者が戦わす法論に接しながら揺れ動く。宗門改革運動にも引かれたものの、心を満足させてくれる宗教者には出会えず―。痛烈な教団批判と煩悶青年の葛藤を息づまる迫力で描く、松岡譲の代表作にして自伝的小説、待望の復刊。
著者等紹介
松岡譲[マツオカユズル]
本名、善譲。1891年(明治24)、新潟県古志郡石坂村(現・長岡市)生まれ。東京帝国大学文科大学東洋哲学専修卒業。在学中に夏目漱石の門下生となり、芥川龍之介、久米正雄、菊池寛、成瀬正一らと親交を深め、第四次『新思潮』に参加。妻は漱石の長女筆子。1969年(昭和44)、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kichy
3
真宗寺院に生まれた主人公が教団内部の実態と親鸞思想の間の隔たりや矛盾を住職である父にぶつける描写が秀逸。父との確執や対立の一方で、寺を出た子の行方を案じて精神を病んでいく母の姿は何ともやるせない。教義を突き詰めて立ち現れる現実世界との矛盾に妥協できないことの苦悩が全編に溢れている作品。寺世界の内情を露悪的なまでに描写されており辟易する部分もある。ただ、多少の誇張はあるかもしれないが、素朴な門徒に対して権威で対峙していたかつての寺院のあり方を批判的に描いているところは真摯に反省すべき点だと感じる。2025/02/23